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J-REITの格付け
  
但し、最近のJREIT投資家に見られるように、もっぱら机上で投資判断を行うには便利な指標ですので、重宝に使われている面もあります。
不動産の世界では、対象となる不動産を見ないで買うことを「ミズテン」と言っていましたが、今のJREIT投資はこれに近いものにあるのが気になります。
なお、格付会社も格付けを付与するときは、保有不動産の質や資産運用能力も審査対象としていますので、一応、総合的な判断に基づく格付となっていますが、参考までに申し上げると、私自身の見方では、この格付けとは意見を異にしています。
格付けとは別に、JREITの投資家層の拡大策として指標を求める声が多いので、以前は、インデックス作りに励んでいたところも多かったのですが、最近では耳にしなくなりました。
実際に評価作業を開始すると、有効な指標作りは至難の技というのが実態なのだと思います。(私自身も不動産の世界に入った頃に、指標作りに挑戦しましたし、コンピューターを使った数式化も試みましたが、結局頓挫したという経験があります。)
このままでは、投資家から見れば、いつまで待っても、有効な投資指標が現れないという不満が募りそうですし、JREITの投資家層の拡大も図れませんから、表面的な見方でも良いから、強引に押し通そうという考え方も成り立ちますし、株式の世界に我田引水する論調も多くなります。
そうなれば、利回りと株価という過渡的な結果だけを見て投資するという株式投資に近くなり、JREITの商品性が弱まります。
これを懸念するJREIT関係者もおり、もっと中身を見て欲しい声もありますが、個別に保有資産の質や運用能力を論評するのは筆者以外には今のところ見当たりません。
その意味では、格付会社もそれぞれ異なる見方で勝手格付けをしてくれると良いと思いますが、格付作業の手間と費用を考えると、難しいと思います。
既にJREITの時価総額は1兆円近くになっていて、配当金が年400億円以上に達しているのですから、投資家も財布に仕舞い込んでいるだけでは、いつまで経っても投資環境は改善されません。
このままでは、JREITの投資家も私募ファンドの投資家と同列に見られて、稼げるだけ稼ぐという銘柄が次々と登場してきますから、防衛のためにも、配当金の一部を情報インフラ作りに再投資する等して投資環境を整備する時期に来ています。

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