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−J-REIT株価推移をどう見るか(その5)−    
  
配当率との関係
年間予想配当率は次期予想配当金(半年分)を株価で割って2倍し求めますが、6銘柄全てが4%を超えていて、最高値はPICの7.55%となっています。
通常、投資商品の配当率は、長期国債金利を基準として、投資商品ごとのリスクを上乗せします。(これをリスク・スプレッドと言います)
現在の長期国債金利は年0.5%を割っていますので、リスクスプレッドは、
NBF/約3.8%  JRE/約3.9%  JRF/約4.3%  
OJR/約5.1%   JPR/約4.2%  PIC/約7.1%
となります。
これも米国の例で見ると、REITはミドルリスクの投資商品として3.0-3.5%程度のリスク・スブレッドとなっていますので、JREITのスブレッドは、まだ高めに取られていますが、JREITの評価が、オリジネーター企業への信頼度とブランド評価になっている現状では、NBFとJREの数字程度が限度かもしれません。 元々、JREITは保有資産の優劣と運用能力の巧拙によって評価されるべきもので、内容によって評価されている場合には、3.0-3.5%のリスク・スブレッドが適当だと言えなくもありません。
今後、JREITに対して本来の評価が行われ、それが投資情報として活用されるようになれば、リスク・スプレッドは縮小の余地がありますが、現状では4%前後というのが妥当だとも言えます。 一方、OJRとPICのリスク・スブレッドは他の銘柄に比べると大きくなっていますし、NAVとの乖離率も小さいので、株価の上昇余地があるようにも思えますが、どうなのでしょうか。

OJR/8954
OJRは既に2回の決算を実施し、配当実績もありますが、唯一NAVがディスカウントとなっています。 OJRにどのような根拠の市場評価が下されているのかは定かではありませんが、私の見方としては、
・ OJRは資産運用能力が最大のチェックポイントとなる銘柄である。
・ オフィスビル・商業施設・住宅と総合型ファンドとなっているために運用能力に対する負荷が大きい。
・ 今後の外部成長(新たな物件取得)戦略を明確にする必要がある。
と考えています。 これらに対して、ファンド側がどのように考え行動しているかは、私も十分把握していないので、現状の株価については明確なコメントができませんが、いずれOJRの中間評価を実施したいと考えていますので、この際に触れるつもりでおります。

PIC/8956
PICについては、配当実績がないことから市場は様子見という姿勢のようですが、第一回目の配当は、予想金額が実現する可能性が高いと思います。 但し、第2期以降の見通しについては、このファンドの特徴である賃貸住宅物件の確保と資産運用能力次第だと言えます。 収益用不動産としては、オフィスビルに比べると賃貸住宅が勝っているのですが、日本の不動産の現状は、賃貸住宅の優位性を確認できる価格まで到達していません。 また、良質な賃貸住宅の供給が少ないという点もPICにとってはやや不利だとも言えます。
このように見ると、PICは、日本の不動産の現状と自分たちの戦略・戦術との擦り合わせを行い、それを市場に対して明確に説明する必要がありそうです。
投資家にとっては、これらの不安を少しでも解消してくれるような動きがないと株価に対する見方も強気にはなれないと思います。 私の見るところでは、近々行われる第一期決算によって、株価は多少上昇するものの、ブレイクする程ではないのだろうと思います。

次回は、NBF・JRE・JRF・JPRの4銘柄について、もう少し掘り下げて見てみようと思います。

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