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2023.10.20.Up Dated.
米国の債券市場の暴落と株式市場の高止まり現象

 米国の債券市場では米国10年国債価格が暴落しています。 2020年に発行された10年国債の価格は現在は50%近く下落していますし、逆イールドと言って10年債利回りより短期国債利回りの方が高くなっています。 本来は短期国債より長期国債の利回りが低くなるのですが、今は逆転している状態で短期国債の利回りが長期国債利回りより高くなっています。
このような逆イールド状態は景気後退のサインで、リーマンショックやコロナショック時にも逆イールドが起こっています。
投資家であれば誰もが理解できるサインなのですが、米国の株式市場はこれに反して相場が高止まりしています。NYダウは依然として3.3万ドル台で推移していて、かなり強気な相場となっています。
一方、日本は国債利回りの逆イールドは起こっておらず、債券価格も暴落はしていませんが、これは日銀の金融政策によってこの状態が維持されていると言えます。日経平均株価も3.1万円台と史上2番目の水準を維持していて、これは米国の株式市場と同じ状況だと言えます。
問題なのは、米国の債券市場の状態が全く株式市場に反映されていないことですが、これは日本にとっても対岸の火事ではない事なのです。
日本の金融機関も米国債は大量に保有していますから、国債価格の下落は含み損になります。保有国債は満期まで保有していれば、途中の国債価格の変動はB/Sに記載する必要はありませんが、米国の中堅銀行の破綻で起こったように、預金の引き出しが加速して、手元資金を確保する為に保有国債を売却すると含み損が実現してしまい破綻に繋がってしまいます。
更に国債より深刻な問題はMBS(不動産担保証券)も価格が半分位に暴落している点です。MBSの発行残高は国債より多く、世界中の金融機関が米国で発行されたMBSを大量保有していますから、金融機関にとって国債とMBS価格の暴落と二重の困難に直面している訳です。
こうなると日本の金融機関も簿外の含み損が拡大していますから、金融機関の融資姿勢はかなり厳しくなります。
金融機関の融資がタイトになれば、当然景気の下押し圧力になりますから、株式市場もこれを織り込んで動くのが通常です。所が米国株式市場は無反応ですから、既にまともな投資家が株式市場には存在していないのと同じ状態です。今は通常の注意力を持った投資家であれば株式市場の状態にはついていけないと考えるでしょうし、人によっては株式市場の指標に疑いの念を持つはずです。
これだけ異常な状態になっても、何も考えず発表される指標を盲目的に信じる人は何をか言わんやですが、多くの人は不審感満載の状態だと言えます。
この状況を自分の頭で考えることは最低限必要な事ですが、一方でこれでも何も理解できない人も多くいそうです。
こうみると世界は二極化されているというのもあながち嘘ではなさそうですが、自分はどちらの極に近いのかを改めて考えてみる必要がありそうです。


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