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2023. 8. 4.Up Dated.
7/28の日銀の発表の影響

 7/28に日銀が今後の金利政策について発表しましたが、これを受けて週明け7/31からの動きで市場の反応をみると、次のようになっています。
日経平均株価は、7/31と8/1の2日間で717.35円上昇しましたが、8/2には▲768.89円下がり、8/3も下がり基調です。
株式市場にとって金利上昇は企業の借入金コスト増になり、その分利益を圧迫しますからマイナス要因の一つになりますが、日経平均株価は不可解な動きを示していて、何とも説明し難いと言えます。
元々最近の日経平均株価は1989年の不動産バブル期に次ぐ高水準に達していて、実体経済とは乖離した動きになっていますから、今回の日銀の発表を受けて不可解な動きをするのも「さもありなん」とも言えます。

次に、10年物国債利回りの動向をみると、7/28に0.5%を上回り、0.540%、7/31には0.595%、8/1は同じく0.595%、8/2は0.625%と一直線に上昇しています。
一方、東証REIT指数は、日銀の発表から下げ続けていますが、国債利回りが上昇すればREIT相場が下がるのは自然な流れですので、REITは教科書通りの動きになっています。

このように国内の投資市場をみると、日経平均株価が異常な動きになっているのが問題です。
為替の動きでは、円は143円台/ドルになっていて、日銀の発表があっても円安基調は止まりませんが、本来は利上げによって円高に振れるのが基本ですので、こちらの動きも不可解だとも言えます。
米国自体の信用力も低下していて、大手格付会社のフィッチが米国債の格付けを最高ランクのAAAから1ランク落とし、AA+にしました。それだけドルの力が低下したとも言えますので、円安基調が止まらない背景の説明が難しくなっています。
尤もネットやメディアでは取って付けたような解説が増えていて、無理やり辻褄を合わせるような論評も目に付きます。本来不可解な事は不可解として探求していくのが学問や専門家のスタンスなはずですから、無理やり辻褄合わせをするのは探求者の姿とは言えません。
更には辻褄合わせを従来の常識のみを根拠としているのでは、今日の時代とはかけ離れていますから、殆ど傾聴に値しないとも言えます。
疑問や不可解な事を感じるのは、進歩の源泉ですし、学問としての本来あるべき姿勢ですので、世の中の現象や動きをサラッと流すのではなく、疑問を探求していこうと姿勢を貫くのが私達のような仕事をしている人間に求められるのです。
そして正解を求めるのではなく、その探求の姿勢を持つことが目的と考える必要がありそうです。
私達の知り得ることは、この世のほんの一面しか過ぎないと考えれば、正解と考える事すら思慮が浅いとも言えますので、不断の探求心を絶やさないことが何よりも重要なのではと考えています。


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