コラムトップ
2018. 1.19.Up Dated.
東証REIT指数上昇の要因

 今週に入ってから東証REIT指数が1,700ポイント台に上昇しています。
何故急に相場が上昇したかを探ると、何時もの事ながら投資法人側にはさしたる変化はありませんので、投資資金の流れが原因だと考えられます。
表面的には米国景気の拡大に伴う株式市場の上昇に連動した動きという事になるでしょうが、インカムゲイン投資のREITではこのような見方では済まされません。
米国の長期金利は2.5%台/年にまで達していて、明らかに金利は上昇基調にありますから、REITの利回りにも上昇圧力が加わり、投資口価格は調整されるのが本来パターンになります。
一方で、賃貸市場の好調によって金利上昇分を補うREITの分配金の上昇が期待出来るという希望的観測もありますが、REITの分配金は単純に賃料上昇だけで決まるものではありませんから、素人的観測に過ぎないとも言えます。
個別の投資法人の投資口価格の動きを見ると、従来市場評価の低かった下位銘柄の投資口価格の上昇が目立ちますから、流入する投資資金の性格が異なっているのではと推測されます。
昨年の動きでみると、下位銘柄は高利回りに魅せられた個人投資家の投資対象になっていましたから、無暗に投資口価格は上昇していません。
また昨年12月の月間取引をみると、金額比では証券会社だけが買い越しで、その他の主要投資家4者は全て売り越しになっていますから、投資家は強気にはなっていないことが分かります。
それが年明けから一転して相場が上昇方向に動いたのは、従来の投資家とは異なった海外組の新規参入があったからではないかと考えられます。
新規参入の投資家ではREITの実態の把握や銘柄選別は難しいですから、単純な買い方になり易い為に、証券会社が得意とする純資産倍率で投資対象を選んでいるとも思われます。
但し、日本のREITに腰を据えての投資ではなく、短期筋の資金が主流ですから、相対的に投資口価格の低い銘柄(純資産倍率が1.0以下になっている銘柄)を買って、価格が上昇したら売り抜けるつもりだと言えます。
そこで下位銘柄の投資口価格を吊り上げて誰が買ってくれるのかですが、これには個人投資家しかいませんから、個人が買いに回ることを期待しての先行買いだと思われます。
これに似た動きが起きたのは、日銀がマイナス金利政策を採った2016年2月のREIT市場でした。
マイナス金利によって、REIT相場が大きく上昇すると読んだ外国法人が大量買い越しを行いましたが、証券会社を除いた国内投資家が大量売りで応えた為に、外国法人の思惑は外れて含み損を抱えてしまいました。
今回はどうなるのかは分かりませんが、REIT市場の個人投資家は賢いですから、恐らく前回に続き思惑は外れる可能性が高いですが、証券会社が相場上昇を囃し立てて新たな個人を勧誘すると思いますから、これには気を付ける必要がありそうです。


Copyright (c) SYC Inc. All rights reserved.