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2015.12. 4.Up Dated.
GPIFの運用損失

 先日、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の7月~9月の運用益が約7.9兆円の損失を出したと発表されました。
投資ですから損することもありますが、昨年10月に安倍政権の肝入りで株式への投資額を従来の2倍にした1年間でこれだけ損失を出したのですから、原因は明らかです。
GPIFの純資産額は6月末時点で141兆円あったようですから、資産の5.6%が消えてしまった計算になります。5.6%程度であれば仕方ないと考えるかもしれませんが、7.9兆円という額は一体何人分の年金支給額に該当するかを考えると空恐ろしくなります。
私もサラリーマン時代に営業外収益に反映される手持ち現預金の運用方式について、一定の基準を設けるべきという意見を持っていました。
確かに投資運用で大きな利益を得ることはありますが、短期間で簡単に大きな損失を出すこともあります。
一方の営業損益は、長期間社員が働いた結果によって造られるもので、損益は予め予想することが出来て、その原因と改善策を考えることも可能です。
このように営業損益と営業外損益は性質の違うものですから、営業外損益は利益を追うのではなく、損失を少なくする運用を心掛けるべきというのが私の持論でした。
GPIFは運用主体ですから、営業損益も運用結果によって造られますので、投資運用の考え方が重要になります。
米国の年金等の運用を見ると、予め長期運用での目標利回りを設定して、その利回り以上の運用方法を含めないとか、委託運用会社に支払う報酬は目標利回りを得た後という契約をしたりします。
一方、GPIFはどうなのでしょうか。アベノミクスに肩入れして国内株式の買入額も増やしましたから、この分の投資は目標利回り(5.5%/年?)以上の運用益を追求したのは明らかです。また証券会社や投資信託運用会社へはしっかりと報酬を払っていますから、年金運用の基本的考え方からして、日本独特だと言えます。
何が独特かと言えば、「自分が痛いのは1分も我慢したくないが、他人の痛みは100年でも我慢できる」という役人根性です。それにGPIFは政権からの要請によってした事だからという逃げも出来ますから、運用損益については、本心では余り苦慮することはなさそうです。
安倍政権も、この件は知らん顔していますが、自分たちに飛び火するのを恐れているからです。それに天下りの官僚と行政の傀儡のような審議委員で構成された旧態依然の組織では対応能力が低いのは明らかなのです。極端に言えば、戦国時代であれば誰も命を預けたりしない人間が上に居る組織なのです。
損失額の大小よりは、こちらの方が深刻で且つ大きな問題だと言えると思います。

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