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2015.11.20.Up Dated.
建物の基礎杭問題について

 横浜のマンションが傾いた事件で、建物の基礎問題が表面化しました。そしてこのマンションの施工会社の旭化成建材だけでなく、他の業者も同様の基礎データの改ざんを行っていたことで、何処までを対象として調べなくてはならないのか分からなくなっています。
REITでは住宅専門の一部銘柄がホームページ上で建物杭基礎についての説明を公表していますが、大半の銘柄は特に何も発表していません。
REITが物件を取得する際には、建物診断調査を行い、その時専門家の目視調査で構造上の問題もチェックされます。所謂構造クラックという割れ目が耐力壁や梁・外壁等に表れていないかを見るのですが、建物竣工からある程度の期間を経た建物であれば、仮に基礎杭が支持地盤に達していない状態であれば、何からの兆候が出ている可能性があります。
従って、原則通りで考えれば、REIT保有の建物では今回のような構造上の問題はないとも言えますが、最近は多様な投資法人が上場していますから、絶対に無いとは言い切れないかもしれません。
それでもREITが保有する建物は賃貸物件ですから、仮に不具合があったとしたらテナントは退去すれば良いので、分譲マンションのような問題の拡大がありません。
従って、建物所有者の問題にだけ帰結しますから、社会的被害は小さくなります。
REITの場合、建物所有者とは投資家となるため、投資家にとっては資産価値の棄損に繋がりますから、やはり多少なりとも気にはなると思います。
その意味ではもう少し投資法人の方も情報開示をして欲しいとも思いますが、却って懸念を拡大する可能性もあって、敢えて触れずに事態が収まるのを待つという姿勢なのかもしれません。
私が行っていたREIT保有物件の現地調査で、かつて同様の問題の兆候が表れていた物件もありましたが、その物件は売却されています。REIT側も保有段階での維持管理によって何らかの疑わしき兆候が発見されれば対処しますし、取得時の前所有者の属性等によって、特に建物診断調査を念入りに行うこともします。
総じて既存銘柄は慎重な対応をしていますが、新興銘柄はやや不安が残ります。
何処まで建物のスペックに留意しているかが今一つ不明ですし、REITの資産運用をファンドマネジャー感覚で捉えている節もあります。本来REITというビジネスモデルの展開はそれ程簡単なことではないのですが、そのような意識が希薄になりつつあるのも確かなのです。

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