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2015. 9.18.Up Dated.
マクロ経済動向と政治

 安保法案が国会を通過したことで、これからは消費税増税が本格的に論議されるようになりそうです。現行の8%から10%への引き上げは2017年4月に決まったので、日本の景気はこれからが正念場を迎えます。
今の民間消費動向では消費税増税の影響は大きそうですから、経済政策の選択の幅が狭くなります。今は円安によって物価が上昇していますし、為替相場を考えると海外からの購入もメリットが小さいですから、どう考えても消費は落ち込みます。
卑近な例ですが、円が100円超になってからは、私も海外のネットショッピングはほとんど利用しません。 かつて70円台の時は、ネットショッピングの半分近くが海外からの購入でしたから、円安によって消費は多少なりとも減っています。
日銀の政策は、円安と長期金利の低下が2本柱ですが、これが民間消費を刺激していないのは明らかですから、消費の落ち込みをカバーする手段もその気もないと言えます。
このように考えると、既にアベノミクスのメッキは剥がれてきていますので、いよいよ手詰まりの感があります。
元々アベノミクスでは、投資市場を持ち上げて消費を活発化させ、更に不動産価格も上昇させるという、かつてのバブルを再現する目的があったように思えます。
所が、世の中は政治家や官僚達の思惑通りに動かなくなっています。彼らは市井に疎い連中ですが、肩書があれば世の中を動かせると思っている感があります。
肩書で世の中を動かせた時代は、富の再分配が順調に行えている時だけです。
政治の本質的機能は富の再分配ですが、富の原資(GDP)が増えないと上手く行きませんから、低成長に入った時から肩書の力は低下する一方なのです。
このように考えると、経済政策のレベルを超えている状態だと言えますが、今の政策には他の知見がなさそうです。
経済学者の話を聞いて政治が出来るという感覚は、今の時代では仕方ない面もありますが、 日本の歴史を振り返ってもそんな時代はありませんから、ただの錯覚です。
そういう意味では、骨太の政治学者の意見や見通しが聞きたくなりますが、今の時代に政治学者というのは居るのでしょうか。

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