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2015. 7.10.Up Dated.
配当利回りの根拠

 東証REIT指数が7月1日は1,810.57でしたが、その後の10日間で7.6%下落し、9日に1,677.52を付けました。
10日間でこれだけ下落するのは珍しいですが、表面的には、ギリシャ問題や中国株式市場の急落といった国際情勢が要因になっていると思われます。
こういう局面では毎度のことですが、このような国際情勢とREITとの因果関係は希薄ですから、ムードとしてREITを下げたという事になります。
但し、REITを冷静に見れば、東証REIT指数1,600台前半は必然でもありますから、マクロ経済動向を契機として本来の相場に戻りつつあるとも言えます。
REITを株式と同じように短期売買で鞘稼ぎをしている投資家にとっては悩ましい局面ですが、インカムゲイン投資として考えている投資家にとっては朗報です。
投資口価格が下がれば、配当利回りが上昇しますから、長期保有のインカムゲイン投資にとっては歓迎したい局面なのです。
尤も、底なしに下落すれば、インカムゲインも吹っ飛んでしまいますが、大した根拠もなく下がっているだけですから、自ずと下限はあります。
この局面でREIT投資家が注意する点は、短期売買をしている投資家も下限を見極めて鞘を稼ごうとしますから、その動きに惑わされないようにしなくてはなりません。
インカムゲイン投資ではどの程度の配当率があれば妥当なのかを根拠にする必要がありますが、この算定は単純ではありませんから、一方で、投資家はどの水準を要求するのかを考えて、相互の配当率を見比べる必要があります。
所が、日本の投資環境ではベースとなる国債利回りが日銀の財政ファイナンスによって歪んでしまっています。
本来投資はリスクとリターンがバランスしているものですから、そのベースとなる国債利回りが重要な数値になり、国債利回りに一定のスプレッドを乗せて要求配当率を決める事になります。
これが投資の大前提ですが、前提となる国債利回りを歪めておきながら、投資促進を訴える政策はかなり胡散臭いのです。
これでは安倍政権も日銀も投資とは胡散臭いものだという前提で国民に投資を訴えていることになりますが、仮に皆様の周囲にそのような人間が居たとしたらどう思うでしょう。
正直言えば付き合いたくないというのが本音でしょうが、これが今の普通の人の常識的な見方だと思います。

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