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2015. 5.29.Up Dated.
野村不動産系投資法人の合併

野村不動産系の3投資法人の合併が発表されました。

野村不動産オフィスファンド投資法人(2003年12月上場、資産規模約4,144億円)
野村不動産レジデンシャル投資法人(2007年2月上場、資産規模約1,622億円)
野村不動産マスターファンド投資法人(2013年6月上場、資産規模約2,664億円)

上記の3投資法人による新設合併方式で、新投資法人の名称は「野村不動産マスターファンド投資法人」になるとのことです。
新投資法人の資産規模は8,000億円超になると見込まれますが、新投資法人が合併するそれぞれの投資法人の資産取得価格によって上下しますので正確には分かりません。
過去の例を見ると、合併時の取得価格は直近期末価格より下がりますから、どの程度ディスカウントされるかによって新投資法人の収益基盤が変わってしまいます。

「合併比率」
新設投資法人の投資口割当交付率から計算すると、
野村マスター:野村オフィス:野村レジデンシャル=1 : 0.72 : 0.74
となりますから、新設投資法人の資産取得はオフィスとレジデンシャルが期末価格を下回るのではないかと推測します。

「直近決算期でのポートフォリオNOI利回り」
野村マスター・・・・・5.79%/年
野村オフィス・・・・・4.16%/年
野村レジデンシャル・・5.19%/年
となっていますから、新設投資法人のポートフォリオNOI利回りは野村マスターの5.79%/年に近づくような取得になる可能性もあります。
因みに、前項の合併比率で単純に新設投資法人の取得価格を計算すると、
野村マスター・・・・・5.79%/年
野村オフィス・・・・・5.78%/年
野村レジデンシャル・・7.01%/年
になりますが、さすがにここまでのディスカウントは難しいでしょうから、トータルで5.79%前後に収まるような取得になるだろうと思います。

「投資家にとってのメリット・デメリット」
現段階では明確には言えませんが、投資口割当率からみると、野村オフィスと野村レジデンシャルの投資家にとっては割り当てられる投資口が本来の口数より減りますから、デメリットだと言えるかもしれません。
合併後の予想分配金は2,100円/口、2,750円/口と発表されていますが、利益超過分が含まれているので巡航ベースの分配金は現野村マスターと分配金と同水準なのかも知れません。

次に、メリットとしては資産規模増大による分散効果の向上ですが、これが具体的に投資家のメリットに繋がるかは定かではありません。
市場の反応を見ると、合併発表後野村マスターと野村レジデンシャルの投資口価格は上昇していますが、野村オフィスはそれ程ではありません。
尤も、当面は提灯相場による価格ですから信用は出来ませんので、現段階の内容で乗せられないようにすべきです。
一方、スポンサーである野村不動産のメリットは明白です。
合併によってあらゆる不動産をREITに売却することが可能となりますし、売却価格も合併によるのれん代(約800億円)を食いつぶす前提ならば、高値で売れますから、新設投資法人の人事を都合よく動かせば美味しい事も出来ます。
従って、今回の合併のスポンサーメリットは分かりますが、投資家メリットは今一つはっきりしませんので、私の評価は中立ながら、ややマイナスというのが正直なところです。

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