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2014. 5.30.Up Dated.
資本政策の転換

 REITにとってエクイティを調達する資本政策は要の中の要と言う程重要性が高いですが、この資本政策を抜本的に考え直す必要が生じて来そうなのが、資産規模1兆円を越した「日本ビルファンド投資法人」と言えます。
日本ビルファンド投資法人は、上場して約13年で、資産規模は2,266億円から1兆657億円と4.7倍に成長しました。
この間比較的順調な投資口価格推移によって外部成長と増資を繰り返すことが出来ましたが、果たしてこの先はどうなるのでしょうか。
次のステップが資産規模2兆円なのかは分かりませんが、13年を経た今日の現状は決して甘くはありません。保有物件数は72物件に達し、その平均築年数は17.5年になっていますから、このまま保有を続けると資産劣化が進行します。
既に資産入替の時期に来ていますので、資産運用会社もそれを意識して動いていますが、仮に売却は出来ても新たに組み入れる資産と資本調達をどうするのかという問題に道筋を付けなくてはなりません。
本来1兆円規模まで成長すれば、分散効果が働いて、個々の不動産のパフォーマンスを細かく見なくても良いと期待感もありましたが、日本のオフィスビル市場の構造では分散効果が小さく、やはり個々の不動産の吟味が必要となります。
又、不動産市場から物件を調達しつつ、更に外部成長を図り、現在のポートフォリオの相似形で成長していくのも疑問が生じますから、再度根本的な視点で見直す必要がありそうです。

今後のポートフォリオの構成については、いくつかのパターンが考えられますが、その前に解かなくてはならないのが資本調達の方法です。
現在の日本ビルファンド投資法人の予想分配金利回りは2.7%前後/年になっていますから、この期待利回りを前提にすれば、比較的外部成長は容易だと考えるかもしれませんが、そう単純ではありません。
一方、市場価格ではなく、1口当りの出資額(出資簿価)換算だと予想分配金利回りは4.39%/年まで上昇しますから、既存投資家が追従して来てくれているとも言えます。
逆に言えば、今の市場価格で増資を引き受けるのは投資としての妙味が薄れますので、今後新規投資家を増やしていくのは困難なのです。
それでは、常に既存投資家に買い増して貰う前提で外部成長を行うのかという事になります。
こうなると、既に5.1%まで低下している個人投資家の構成比率は、3%程度までの低下は必至ですから、これにも目配せしなくてはなりません。
こう考えると、解かなくてはならない問題がいくつもあって、それらが相互に関連しているので、一層難解になります。
尤も、日本ビルファンド投資法人以外はそこまで考えなくてはならない状態ではありませんし、仮に日本ビルファンド投資法人が解を示してくれればそれを真似すれば良いのですから気楽ですが、日本ビルファンド投資法人はその分責任が重くなります。
但し、未だ多少の時間的余裕がありますので、それらをじっくりと考えてREITの方向性を示して欲しいと思っています。

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