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2014. 3.14.Up Dated.
REITと個人投資家


 REITと個人投資家とは必ずしも相性が良くありません。 例えば最初の上場銘柄である日本ビルファンド投資法人とジャパンリアルエステイト投資法人の個人投資家構成比率を見ると、次のようになっています。
 
第1期 直近期
発行済
投資口数
個人比率 個人数 発行済
投資口数
個人比率 個人数
日本ビルファンド 280,700口 14.90% 10,231人 692,000口 5.10% 13,897人
ジャパンリアル 160,000口 19.70% 12,045人 594,140口 5.60% 13,144人

第1期(約12年前)と直近期を比べると一目瞭然で、発行済投資口数はそれぞれ2.46倍、3.71倍に増えたものの、投資主数は35.8%、9.1%の増加に留まっています。
保有投資口割合による構成比率は既に5%台まで低下していて、どう見ても個人投資家との相性は良くありません。REITはこの12年で確実に発展してきましたが、その過程で個人投資家は削ぎ落とされて行った感があります。
元々REITは個人投資家に対して不動産投資をより身近な物にするという目的で発足した経緯がありますが、実際に上場してみると、その仕組みが分かり難い、リスク・リターン特性が読めない等の商品特性の技術上の問題が生じました。特に黎明期では証券アナリストも分からず、資産運用会社が基本的な説明を行う機会を設けるしかありませんでした。
そこで、資産運用会社はREITの発展の為には、先ずプロ投資家を誘引するしかないと考え、地銀等へのIRを積極的に行いました。当時は暫く個人投資家へのアプローチは後回しにして、機関投資家に買ってもらう事が優先されたのです。
但し、REITの設立背景から個人投資家を無視する訳には行かず、建前と本音を使い分けながらのIR活動を展開しました。
確かに、今日でもREITの商品特性を理解することは難しいですから、黎明期では仕方ないとも言えますが、この2銘柄の軌跡がREIT全体の趨勢となってしまい、人気銘柄程個人の比率は低くなっています。
こういう環境にどっぷりと浸かっていた時に、NISAが導入されることになり、各銘柄は慌てて対応を始めた感があります。
勿論、以前より投資口を小口化していたり、個人投資家にアプローチしていた銘柄もいくつかありますが、これらは少数派でした。
多数派は、取り敢えず形だけでもNISA対応という姿勢ではないかと思われます。
以前よりREIT投資を行っている個人投資家は、こういう現状は理解していると思いますが、NISAを機にREITに注目した個人にはこのような経緯も分からないと思います。
今日のREITは、単に投資家に買ってもらうというレベルから、保有を続けてもらうというレベルに移行しつつありますので、これにはNISAは最適なのですが、依然として過去の習い性で個人への対応には積極姿勢が見られません。従来と変わらず、何かのフェアに参加してお茶を濁す程度では、個人投資家が減少してきた経緯を覆せませんので、そろそろ本質的に考え行動すべきなのではないかと思います。

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