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2013.10.25.Up Dated.
長期投資における市場価格の考え方
 
 今回はNISA口座を利用して投資を開始する際の注意点を述べます。
最も重要なことは、市場取引価格をどう考えるかになります。
市場での取引価格は日々変動していますが、これは本来の価値に準じているものではないという理解が必要です。株式やREITの価値が日々変動する合理的理由はありませんから、これは市場参加者の取引の結果を表しているのに過ぎません。
今日ではREITの取引でも短期売買が中心になっていますが、短期売買ではその価値ではなく、転売の可能性が優先します。
一例を挙げれば、日本ビルファンド投資法人の投資口価値が幾らかではなく、120万円で買っても125万円になるかという点だけを斟酌すれば良いという投資行動になります。
転売目的ですから、長期保有は利益の最大化が見込まれる場合だけで、通常はある程度上昇すれば即利確に走ります。
これを日々繰り返した結果として投資口価格が形成されますので、NISAのような長期保有型投資では、従来とは異なった視点で投資口価値を考える必要があります。
具体的には、過去の長期(3〜5年、又は7〜10年)の変動を調べ、変動の上限と下限を押さえて変動レンジを確認することです。更に、その変動レンジを理論的価値と比較することで、本来の価値を考察するというプロセスが必要です。
こうなると、やはり専門家の領域になりますが、長期トレンドを分析し理論的考察を加えている専門家となると殆ど存在しません。背景には、このような専門職がビジネスにならない事も挙げられますが、一方で、かなり高度な専門性が要求される為でもあります。

そこで、一旦現実に戻ると、先ず、株式に付いては長期保有でのリスクは大と考えておくべきです。株式投資では、機動的な投資行動が肝になりますから、NISAのような投資には本来は向いていません。投資信託も組成内容商品によっては同様になりますから、株式に準じてリスク大と考えておくべきです。
本来、長期投資では投資リスクが何処まで読めるかが鍵になりますので、極力リスクの考察が容易な商品を選ぶのが賢明なのです。即ち儲かるか否かではなく、損失がどの程度なのか、そして損失を発生される要因が事前に読めるのかがポイントになります。
然しながら、投資商品の発行主体の中で、長期投資用に完全にシフトしている所はありませんから、現在は程度の差しかありません。
以上の事からNISAと騒いでいても、その為のインフラが全く整備されていないのが現実ですから、ここは慎重に構えるべきです。
煽り専門のコメンテーターが主体なのは投資の世界では常識ですから、くれぐれも拙速な行動は慎むのが最大の防衛策だと考えておくべきです。

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