コラムトップ
2013. 9.20.Up Dated.
長期保有のNISAの難しさ
 
 NISAの申し込みが10月1日から始まりますが、実際に投資するのは来年からになりますので、事前の3ヶ月は準備期間だと言えます。
尤も、来年になっても直ちに投資を開始する必要もなく、口座だけを持っていて様子を見ながらのという人が多そうですから、開かれた口座数がそのまま投資をするとは限りません。
個人にとってNISAは大変魅力的ですが、一方の売り手側にとっては新たな難題を抱える事になります。
先ず、NISA投資は最低でも1年間は保有しますし、状況によっては数年保有になりますから、その保有期間で現実的な投資収益を得られる事が求められます。
そして投資収益が読めるのは配当金ですから、配当型投資商品が第一候補になります。
勿論、株式でも配当金(大半は年1回)はありますから投資対象にはなりますが、株式投資は売買によって投資収益を回収する商品ですので、NISA用としてはかなり劣後します。
元々、配当型投資商品の最右翼は債券投資(国債・社債)ですが、これらはNISAの対象外になっていますし、その配当利回りは低いですから投資妙味としては少なくなります。
このような事情から各社とも投資信託を第一候補として売ろうとしていますが、元々低い利回りの商品を束ねていますから、魅力的な配当金を出すには売買を繰り返します。
従って、投資信託の分配金には元本の払い戻しも含まれていますから、これはNISAにとって不利になります。
そもそも、元本の払い戻し分には税金が掛かりませんから、仮に分配金の半分が元本払い戻しに該当していれば、敢えてNISAを使わず一般投資の枠にする方が良いのです。(一般投資では損失が生じた場合に損益通算が出来ます)
金融庁も投資信託の分配金は、純粋な配当収益分と元本払い戻し分を分けて表示するようにと指導していますので、投資家は分配金の中身を精査してから検討するという姿勢が必要になります。
これらの事から、売り手側にとって難しいのは、NISA投資家にどのようなアドバイスをすれば良いかです。
数年保有の投資商品というのは、比較的レアな投資スタイルですし、投資市場の数年先を見越すということは無理なので、全て投資家の自己責任に委ねていたのが現実です。
これら長期保有の投資家が機関投資家等の他人の資金を運用している主体ならば、それなりのエクスキューズもあり得ますが、個人で全て自己の損失に直結するようなNISA投資家となると、迂闊なアドバイスは出来ません。
仮に、売り手側の意を受けてのアドバイスやポジショントークらしき内容だと後日問題が起きそうですから、慎重にならざるを得ません。
こうなるとアドバイスは自分の立ち位置を明確にしてから行なう必要がありますから、従来の専門家群では対応できません。
結局は、純粋に投資家側に立った専門家が必要になりますが、日本ではこのような職種はありません。(生計を維持出来る収入の見込みが立たない為)
それと長期保有投資商品となると経験と勘だけに頼った見込みでは対応できませんから、日々のデータを収集し分析した上での理論構成が必要となりますので、片手間で出来る労力ではありません。
このように考えるとNISA投資家は、先ず投資参考情報の吟味から始め、その情報の出所と出典者のポジションの確認を行う必要があります。
従って、匿名によるネット情報等は全く頼りにはなりませんから、新たなニュースソースを探すことから始める必要があると言えますが、前述したように対応出来る専門家が存在しませんから、マスメディア情報も余り参考にはならず、結局は売り手・買い手双方にとって新たな課題を現出することになりますが、この課題を越えられれば、日本の投資市場は新たな発展に向かうと期待出来るのです。

Copyright (c) SYC Inc. All rights reserved.