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2012.10.19.Up Dated.
REITの増資状況
 
 今年はREITの増資が活発化していて、既に公募増資が10件に達しています。
因みに、2009年6件、2010年6件、2011年9件で、この件数には第三者割当増資も含まれていますので、公募増資だけで10件は多い年になります。
一方、投資口価格の状況を東証REIT指数でみると、
2009年年間平均値・・・900.06
2010年年間平均値・・・943.25
2011年年間平均値・・・995.91
2012年の平均値・・・・939.42
ですから、投資口価格で見ると今年が特別良い訳ではありません。
それでも増資が活発化したのは、投資口価格を現在の状態でFIXして考えるようになった為だと言えます。
増資価格を欲張らず、投資口簿価以上又は近似であれば了として、増資による希薄化対策を積極的に講じる事が一般的になっています。
その希薄化対策の主流は、増資に併せての物件取得ですが、好調時のような高値取得(低利回り物件の取得)は行わず、ポートフォリオ利回りを引き上げられるような取得を行っています。
従って、新たに取得する物件にA・Sクラスのオフィスビルを加えることは難しく、最低でもNOI利回り4.5%/年程度は確保しなくてはなりません。

そこで問題は、これをどのように見れば良いのかですが、視点によって全く逆の見方になります。
感覚的マクロ経済論者は、不動産価格の上昇にブレーキを掛けると見るかも知れませんし、表面的に見る人は、良質な物件が取得出来ていないと言うかも知れません。
従来の通念に囚われている人はこれらの見方に与するでしょうが、REITの資産運用から考えれば、不確かで曖昧な不動産価値上昇に期待するよりは、確実な収益が計算出来て、分配金に寄与する物件を確保するのが先決です。
一方、投資家から見ると、増資による希薄化を回避し、将来の分配金水準を上昇させる可能性のある物件取得を行い、且つ、増資価格が高くない状況は、インカム型投資商品の魅力を増しますから、歓迎すべき状況です。
更に、こういう状態は資産運用会社が知恵を絞らなくてはなりませんから、それも投資家にとってはプラスです。
一般にマスコミ等は、不動産価格が上昇しREITが低い利回りの物件でも活発に取得する状況を好調と見做しますが、これはお祭り的感覚です。
REITのように長期投資でインカムゲイン期待の投資商品では、お祭り等を避けて、着実に安定した状態を維持することが重要です。
但し、不動産業界はお祭りがなくては生きられない業界だとも言えますので、今のような状態では面白くありません。
その為に、今が買い時と連呼する論評しか受け入れませんが、現実はそのような時代はとうに去ったとも言えると思います。

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