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2012. 9.21.Up Dated.
基準地価雑感
 
 国交省が基準地価なるものを発表しましたが、一体、基準地価とは何でしょうか?
基準というからには、表示された不動産価値を保証しているのでしょうか。
勿論そんな事はなく、基準地価より大幅に低い価格でしか売却出来なかったとしても、何の救済もありません。
行政が基準という以上、例えば、基準地価以下での売却の場合は免税になるとかいう救済策があっても良さそうですが、実際はその逆で、安すぎる不動産売買では低廉譲渡という税法上の仕打ちが待っています。
元々、不動産売買に関する税は、通常の課税ではなく、分離課税で譲渡益の約36%か52%の税金が課せられますが、この税制の根拠には、不動産価値は社会インフラによって形成され、所有者の努力ではないという考え方が背景にあるからです。
この考え方は今日でも妥当ではありますが、裏を返すと、誰でも不動産売買によって利益を得られるチャンスがあるとも言えなくはありません。
これが、個人でも不動産投資を行う理由の一つになっていますが、今日の不動産を考えるとかなり局面が変わってきています。
例えば、都内のオフィスビル用地を取得して、オフィスビルを建築しても、実際には稼働率が低迷し賃料も想定より大幅に低くなり、赤字賃貸経営になることも十分あります。
これを回避するには、事前に十分な調査を行い現実的な想定収支を立て、更に建物完成後にもPMの努力を尽くして賃貸利益が出るような努力をするのが、今の不動産市場です。
そして、築年数の経過により市場競争力が低下するのを抑制するメンテナンスやリニュアルも施さなくてはなりませんが、こうなると誰でも出来る事ではありません。
不動産価値の算定が収益還元に変わった時からこうなる定めなのですが、国交省等は旧態依然の考え方に縛られています。
政治の視点で見れば、個人に直接不動産投資を奨励する必然性は乏しく、又、資産形成という面でも、保有するだけで良いという考え方はおかしいのです。
この事が分からない行政当局によって不動産私募ファンドが一時期隆盛を見ましたが、これは行政を含めた合成の誤謬の典型です。
本来、不動産政策は行政が考えることではなく、政治の分野です。しかも、かなり大きな視点でマクロ経済を考え、将来の影響も考慮して展開する必要がありますが、今の政治家はそこまで考えが及びませんし、そういう事を専門に考えるシンクタンクもありません。
このような中途半端な状態で、過去の残滓のような行政措置が続けられていますので、そろそろ真正面から不動産を考えるべきだと言えます。 それは頭が回らなくなったという50代以上ではなく、もっと下の世代の仕事です。不動産のような複雑な仕組みの物を考えるのは柔軟な思考と物事の本質を追求するという事が普通に出来る世代の担当です。
こう考えると、国交省の不動産担当部署は20代・30代に任せた方が将来の国益に沿うとも言えると思います。

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