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2012. 9. 7.Up Dated.
シニアハウスについて
 
 国交省がシニアハウスのREIT化を検討しているようです。
現在REITが保有しているシニアハウスは、インヴィンシブル投資法人が7物件、アドバンス・レジデンス投資法人が1物件、そしてオリックス不動産投資法人が1物件です。
最多のシニアハウスを保有しているインヴィンシブル投資法人は、23区内2物件、首都圏3物件、地方都市2物件という内訳ですが、この投資法人の市場評価は低く、シニアハウスがREITの保有物件として適切なのか否かは分かりません。
アドバンス・レジデンス投資法人は、日本レジデンシャル投資法人の保有物件を引き継いだだけですから、投資対象として考えている訳でもなさそうです。
一方、オリックス不動産投資法人は、最近シニアハウスを取得したので、唯一投資対象として考えている投資法人だと言えます。但し、オリックス不動産投資法人のように、あらゆる用途を投資対象とする総合型銘柄は、小さなポジションであれば収益が得られる用途であれば取得するでしょうから、必ずしも積極的だとは言えません。

国交省はシニアハウスがローリスクだと考えているようですが、REITのような長期保有ではそれも根拠が薄弱です。恐らくREITの仕組みを利用してシニアハウス市場を拡大しようと目論んでいるのだと思いますが、相変わらず業者サイドに立った視点しかないようです。投資家や市場を意識するというよりは、シニアハウスを展開する業者の為という業界利益誘導型の行政から離れられていません。
それでも国交省の考え方は別にして、純粋にシニアハウスを投資用途として考えてみると、確かに容易にNOI利回り6.5%程度が得られますから、REITの収益の底上げには寄与します。
従って、収益上昇を狙うREITにとっては検討対象にはなりますが、オペレーションの内容が見えず、どのような運営しているのか分からない用途の物件を抱えるリスクが存在します。
シニアハウスは運営方法によって収益が上下しますので、中には社会的物議を出すような業者も存在しますから、REIT保有物件でそのような事が明るみに出れば、市場評価を下げることにもなりかねません。
若干の収益向上を狙った物件が投資口価格を下げることになれば、投資家にとっては迷惑ですから、大半のREITは及び腰です。
こう考えると、総合型銘柄が小さなポジションで散発的に取得するというのが合理的です。
従って、国交省が後押しするシニアハウス専門REITという考え方は、未だ先の話になりますが、そうこうしている中にターゲットとなる団塊世代の余命率が少なくなりますから、立ち消えになりそうです。

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