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2012. 6. 1.Up Dated.
政治機能の鈍化
 
 日本の政治機能が弱くなってきましたが、これは日本だけでなく欧米の先進国でも同様のようですし、発展途上の中国・インドなどでも政治の力は弱まりつつあるようです。
何故このようになっているのか色々な見方があると思いますが、政治の本質的機能は富の再分配ですから、その塩梅が上手く働いていない為だと考えられます。
先進国は何れも低成長に入っていますから、富の増加が小さくなったり、横這いであったり、又は減少傾向にあります。
このように再分配原資が停滞すると、元々成長を前提にしていた分配機能は上手く働かなくなり、国民に不満が溜まります。
一方、発展途上国では、経済成長があっても富の分配に偏りが生じ、それが不満の元になります。
このように政治の分配機能はその国の経済状態によって問題点が異なりますが、上手に機能させることは何れも至難の技でもあります。
EUは加盟国の債務危機で揺れていますが、これは見方を変えれば、戦争という手段を使わず、穏便に域内の富をドイツが集積し過ぎた結果だとも言えなくはありません。勿論その背景にはドイツの産業力の強さがありますから、合理的な手段ですが、その富の流れを上手にコントロール出来なかったとも言えます。
逆に、発展途上国では富の分配は偏りがちになりますが、これを平等にし過ぎると共産主義のように停滞が生じ、活力も無くなりますから、偏差を残しつつ調整することで成長活力を維持しなければなりません。
こうなると政治は、文化とか理念とか道徳観念まで使ってコントロールしなくてはなりませんから、より高度化します。
それは、日本のような低成長国家でも必要になりますが、今はそういう手段が殆どありません。江戸時代のように儒教精神や仏教思想を活用することは出来ませんから、低成長でも人々が一定の満足度を得られる考え方を敷延させなくては、不満の蓄積を止められません。その為には宗教が不可欠ですが、近代国家は政治と宗教を分離していますから、これらを融合させてコントロールする手段は使えません。
それでは、このままで推移するとどうなるのかは、EUが見本を示してくれそうです。
南欧諸国の債務危機は続くでしょうが、その先はどうなるのか、楽天的な考え方で上手く順応するのでしょうか、それとも蓄積した不満が一気に爆発するような事態に至るのでしょうか、何とも予測が難しい時代になったような気がします。

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