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2012. 4.27.Up Dated.
不動産私募ファンドについて
 
 AIJ投資顧問の問題によって、私募ファンドの危うさがクローズアップされたこともあり、ARES(不動産証券化協会)から、会員各社が運用している不動産私募ファンドの開示情報の統一や実態調査等の動きが出てきました。
この目的は、主要な投資家となっている国内年金資金が逃げてしまう事を防止することだと思います。
4月20日に発表された「会員対象不動産私募ファンド実態調査」を見ると、外形的な項目が多く、必ずしも投資判断に寄与する内容ではなさそうですが、要は少しでも実態を伝える姿勢を示すことが大事だという事のようです。
今回のARESの動きは、不動産業界が危機意識に敏感に反応したという事かも知れませんが、内容的には本来の投資家の求める内容にはなっていないと言えます。勿論、ARESのような業界団体では投資家の目的に沿うのは難しいですし、中立と称して個々の良否の判断を避けますから、仕方ないとも言えます。
不動産私募ファンドについては以前から三井住友トラスト基礎研究所(旧・住信基礎研究所がデータを公表していましたので時折チェックしていましたし、総合ユニコムが主催する不動産フォーラム等でも資料を入手していました。
但し、私がカバーしているのはREITですから、飽くまでもREITとの対比としての範囲です。
私募ファンド全盛時には、外部からファンドを評価する人達も居ましたが、そういう人達は今は見かけなくなりましたので、私募ファンドへの投資は、100%投資家自身の判断による自己責任というのが現状です。
通常、投資と言うのは、反対情報や客観情報が入手できない場合、手を出さないというのが常識ですが、日本ではこの考え方は普及していません。
それよりは、クローズされた中で美味しい話を拾うのが投資のポイントだと考える人の方が多いようです。
SMBC日興証券が流した増資インサイダー情報も、こういう土壌があるから行われるのであって、逆に見れば、証券会社も同じように投資を考えているからだと思います。
他人には分からない美味しい話というのは眉唾もので聞くのが普通ですが、投資という世界ではそれが通用しないのが実態です。
当局も規制を強化することを考えているようですが、この問題は規制だけでは解決しません。 関係業界及び関係者が真に解決する気はないとも言えますから、投資家が利口になるしかないのだと思います。

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