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2012. 4.13.Up Dated.
オフィスビル2012年問題への対応
 
 2012年に入って決算発表を行った投資法人の中で、都内にオフィスビルを保有しているのは11銘柄ありますが、このうち決算説明資料でオフィスビル2012年問題に直接言及しているのは日本プライムリアルティ投資法人と、僅かに新規供給グラフを掲載している森ヒルズリート投資法人だけで、その他銘柄からは何の説明もありません。
中には東急リアル・エステート投資法人のように豊富なデータを資料として掲載しているものの、2012年問題については記載がないのが実態です。 これは一体どういう事なのでしょうか。

1. 問題として認識していない
決算説明資料を読む限り認識がないようにも思えますが、資産運用報酬を得ているプロとしてこれでは失格ですし、当事者能力も疑われますので、恐らく内々では認識だけはあるものの推測されます。

2. 影響がないと読んでいて、敢えて説明しない
これはデータを読んでいないで、単に推量だけで楽観的見通しを立てているだけですから、素人と同じです。

3. 影響が分からない
2003年の経験から影響はあるものと考えているが、具体的にどのような影響があるか分からないので、敢えて触れないでいる。

4. かなり深刻な影響を予測している為に、市場への影響を考慮して、明確にならない限り、言及しない。

以上の4つが考えられますが、1と2はお粗末すぎますから、恐らく3と4だと思いますが、3の方が多いように思えます。
資産運用会社はプロとして扱われている以上、「分からない」とは言えませんから、ここは敢えて言及せずスルーしておこうという銘柄が多いように思えます。
中には4という銘柄もあると思いますが、これはかなりのマイナス情報になりますから、公表するのは慎重になるであろうと言えます。

それでは、投資家はどう考えれば良いのかが問題ですが、資産運用会社がアナウンスしない為に、判断が出来ません。
然しながら、REITがこれで良いのかという本質的な問題が残ります。
株式市場と異なり、REITの資産運用会社はプロとして投資家から委託を受けて運用を担当している主体ですから、マイナス情報を含めて投資家に公表する責任があります。
ましてインカムゲイン投資商品であれば配当原資に直接響く問題についてノーコメントが許されるのかとも思います。仮に2012年問題によって配当金原資が減少した場合、後付けで説明するようでは情けないとも言えます。
尤も、2012年問題はこれからですから、4月以降に決算発表を行う銘柄は何かアナウンスするかも知れませんが、代表銘柄である日本ビルファンド投資法人の2011年12月期決算発表(2012/2月発表)でも触れられていない為に、他銘柄は困っているのかも知れません。
何れにしても、何時かは見通しを出さなくてはならないのですから、少なくとも情報収集は怠らないようする事、そして万が一にも大口投資家への個別説明で言及するようなインサイダー情報の提供に該当するようなことはしないという対応が必要です。


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