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2011. 7.29.Up Dated.
人材育成
 
 ここ数年、気分転換でコンサートと落語に出かけるようになりました。
落語は色々な噺家を聞きますが、大看板の高座には前座が出ますので、これらの噺家と目当ての噺家を聞き比べる事が出来ます。前座と言っても真打の場合もありますので、決して下手ではありませんが、彼我の差は歴然です。また有名な噺家同志でも、何度か聞くとその差が分かります。
ミュージシャンの場合も同様で、最も頻繁に行く渡辺貞夫(ジャズ)のコンサートでは、都度、ミュージシャンの顔触れが変わりますので、ピアノ等のパートの音楽性を比較することが出来ます。 ナベサダのコンサートでは、ピアノのソロが多いのでより違いが分かりますが、若手の実力派の力量と巨匠クラスでは気の毒な位の差が出ます。
この違いを適切に表現するのは難しいですが、敢えて比較すると、並みとやや上手い人の差はそれ程ではありませんが、やや上手い人と巨匠の差はかなり大きく感じます。
これらの例から考えると、様々な業界でも、やや力のある人、やや優秀な人は多いと思いますが、本当の実力派は少ないだろうと思います。高等教育の普及により、やや優秀な人は多く輩出されていますが、本当の実力派は教育システムだけでは育たないのでは思います。
ミュージシャンの場合でも、巨匠というのは聴衆が見出して育てるもののようです。
同じように優秀な人材は、求める人達の熱意と注目という土壌が必要だと思いますので、今は、社会が真摯に優秀な人材を求める気持ちが重要です。
優秀な人材の卵というのは、何処にでも存在している訳ではなく、また簡単に見分けられるものではありませんから、日頃から注意を払っていなければ見出せません。
そして、見つけられたら、それを社会が育てるという努力をしなければ、その実力を発揮してくれませんので、優秀な人材というのはその時の社会にどれだけの熱意があるかによって変化します。

こう考えると、REIT業界でも同じことが言えるのでは思います。 一般的にREITの資産運用会社の人材には高学歴者が多いので、やや優秀な人はかなりの数が考えられますが、本当に優秀な人材が居るのかは疑問です。今日のような状況にあっては、並みとやや優秀な人材では対処出来そうもありませんが、突然優秀な人材が現れる訳でもないので、以前よりREIT業界がそういう人材を熱望していなくてはなりません。
然しながら、現実はスポンサー企業からの出向者が大勢を占めていて、特徴のない人材が目立ちます。
今のREITの問題は、それぞれの事象や取り巻く環境だけでなく、人材の質にこそ本当の原因があるのではないかと思いますが、それは投資家にも責任の一端があります。
果たして、投資家が日頃からそういう目で人材を吟味しているのかは甚だ疑問ですし、結果よりもプロセスを重視していなければ、人材というツールを必要としませんから、今以上のレベルに昇るのは難しいのではないかと思います。

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