コラムトップ
2011. 7. 1.Up Dated.
REITの現状と今後
 
 REITの投資口価格の動向を東証REIT指数でみると、震災後の最高値が4月6日の1,072.47、そして最低値が6月28日の1,018.94と徐々に下がってきています。
また、東証が発表する投資部門別売買動向をみると、5月は外国法人が大幅売越に転じていて、売越は半年ぶりです。 外国法人の取引動向は、一旦売越に転じると数ヶ月は続くので、好材料が出ない限り、少なくとも秋まではこの状態が続くと予想されます。
取引の最大シェアを占めている外国法人が売越に転じれば、当然この先も投資口価格は下がっていきますので、この夏はREITにとって寒い季節になりそうです。
この原因については色々な見方がありますが、何よりも買いの材料が出ないことだと言えます。

先日、大型の海外ローンチを行ったユナイテッド・アーバン投資法人の資産運用会社によると、海外投資家は日本の現況については偏った見方をしておらず冷静に見ているとのことです。また久々の海外募集という事もあって、買い意欲は国内よりも強かったようで、かなりの手ごたえを感じたようですが、せっかくの海外ローンチも単発で終わってしまえば一過性のイベントでしかありません。
こういう時に、REITが何を為すべきかは何度かこのコラムで触れていますが、兎に角、動くことで外部にエネルギーを放出しなければなりません。
また、海外投資家が日本の実状について変な誤解はないとしても、この先の不透明感は感じているでしょうから、機会を設けて説明を繰り返すことも必要です。
但し、国内向けの説明のように、不動産神話的な話は通用しませんし、賃貸市場についても楽観的な見通しを述べるだけでは相手にはされません。
REITという仕組みは、元々、不動産のキャビタルゲインから離れることが前提になっていますし、賃貸市場の変動に対しても一定のスタビライザー効果が機能するようなポートフォリオを作っているはずですから、これらを論理的に説明してパフォーマンスの下振れ限度を示せれば、インカムゲイン投資家にとって魅力が残ります。
上場35銘柄の予想分配金配当率は平均で年5%程度ですが、個別にみると5%台後半の配当率になっている銘柄の中にも有力銘柄がいくつか入っています。 これらの銘柄が、今後の予想変動幅を示せれば、現状の利回りは十分に魅力的ですから、それだけで買いに動く投資家もいます。
また長期に亙る資産価値の変動に対しても、ポートフォリオによって一定度はヘッジされていますので、冷静に見れば、REITは十分に機能が保たれています。
それにも拘わらず、低落傾向に入るのは、説明不足とアピール不足だとも言えます。

更には、REITという仕組みの中に、無理に不動産鑑定制度を取り入れたことも関係しています。
良い時はバブルのようになったり、悪い時は想定以上に下がったりするのは、不動産鑑定制度にも関係があります。元々、日本の不動産情報には透明性がなく、誰でも必要とする情報が容易に入手できる環境ではありません。情報入手を難しくすることによって、不動産鑑定制度が成り立っているとも言えますので、本来は情報を入手し易くして不動産鑑定に頼らないようなインフラ作りが必要なのです。
換言すれば、取引情報を閉鎖的にすることで成立するような資格制度を作るのではなく、情報公開を進めるのが本筋です。 こういう当たり前の事を推進してこなかった事が、状況が悪化すると響いてきます。一概に誰が悪いとは言えませんが、こういう事に疑問を感じず日々過ごしてしまうようなカルチャーが日本を停滞させる原因にもなっているのではないかと思います。

Copyright (c) SYC Inc. All rights reserved.