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2010. 7.30.Up Dated.
投資価値と市場取引価格

 REITの投資口価格は日々の売買によって形成されていますが、これを即投資口価値とするのは早計なような気がします。
元々、不動産投資における投資価値の算定は難しく、また不動産投資そのものも難しい投資だと考えられていました。
ところが、REITという大型ポートフォリオを有する主体が登場した事で、多くの人がREITを通じて不動産投資が出来るようになりました。そして、REITは不動産投資を有価証券投資に変換した仕組みなので、この仕組みを使って新たな投資手法が生まれました。

それは、投資価値とは関係なく、頻繁に売買することでリスクとリターンをコントロールする方法です。
REITの投資口価格は様々な理由によって日々変動していますから、これに着目して頻繁に売買を繰り返す事でリスクを軽減出来ますし、リターンも得られます。
即ち、投資口価値とは関係なく、売買する事でリスクとリターンをコントロールしようした結果によって市場の取引価格が決まるという事です。
本来の不動産投資では元本の変動リスクが大きいですが、取引市場のある有価証券取引では、これを相当に小さく出来ますから、外国法人や証券会社はこのような売買を繰り返していると考えられます。

一方、本来のREIT投資姿勢であるインカムゲイン目的の長期投資の視点では、市場取引価格をそのまま投資価値とするのは合理的ではありませんので、別の尺度が必要となります。
然しながら、現段階では、REIT銘柄の投資価値を算定するような明確な尺度がありません。
これが、REIT投資を難しくしている一つの原因にもなっていますので、長期投資姿勢での投資価値を計る手法が求められます。
この尺度については、いくつか候補が考えられますが、投資家のコンセンサスを得られるには時間を要しますので、今後は投資価値算定の尺度について提唱し、議論を展開するようになれば、REIT投資の環境は好転するのではないかと考えています。
私自身も、今後はセミナー等を通じて長期投資での投資価値算定の尺度を提唱していこうと考えています。


 
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