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2010. 6.11.Up Dated.
欧州の財政不安とREIT

 ギリシャから端を発した欧州(ユーロ圏)の財政不安が、日本の株式にも影響を与え日経平均を押し下げていて、その影響でREITの投資口価格も下がり、今週に入って再び東証REIT指数が900を割り込みました。
その変動幅は相変わらず株式に比べてREITが大きくなっていて、マクロ経済動向の影響を大きく受ける商品というイメージが強くなっています。
尤も、REITの変動率の大きさが目立つのは、株式と比べてREITの投資口の流動性自体が小さい為なので、必ずしもREITの商品特性だとは言えません。
それに、欧州の財政不安との関連度は株式よりREITの方が弱いですから、理論的にはREITの投資価値変動には直接は関与しないと考えられます。
しかしそうは言っても、実際にREITの投資口価格はかなり下がっていますから、先行きを心配する声もあります。

最近では、ユーロ圏の金融機関の不良債権が問題視され始めていますが、これは不動産バブル後の日本と同じ現象だとも言えます。
どの国でもそうですが、金融財政政策にとって不動産は扱いにくい鬼っ子のような存在らしく、中国も不動産価格の高騰に対して税制対策を発動するようです。
日本にも土地基本法があって、仮に不動産価格が大きく高騰すれば、国土利用計画法による規制区域指定や、特別土地保有税の復活、超短期譲渡所得税の復活等のメニューが用意されていますので、高騰にはある程度対処可能ですが、下落に対しては効果のある対策は少ないのが実状です。
これは欧米にも同じことが言えますが、日本と比べて投資業務が発達している分、不動産の下落が急激に起こる事も考えなくてはなりません。
また、企業の時価会計の進行によって、不動産価値の下落が直接B/Sに反映される為に、投資市場が反応し易くなっていますから、日本の不動産バブル崩壊後より伝播は早くなっています。

これらの事を考慮すると、日本も本腰を入れて金融財政政策に不動産を取り込み、そのメカニズムを解明し、ショック・アブソーバを多段的にビルトインしておく必要がありそうです。
かつての不動産バブルによって、マクロ経済への深刻な打撃を受けた日本は、世界に先駆けて、コントロール手法を創出出来る可能性があるのですから、その方向に関係当局の英知を傾けても良いのではと思います。
実は、マクロ経済と不動産の相互メカニズムが解明され、そのコントロール手法が分かれば、REITの商品特性が明確になるとも言えるのです。
これはREITにとって有力な援軍になりますが、一方で、金融財政政策が大きく進歩する事にも繋がります。
不動産をマクロ経済の中で考えそのメカニズムを解明していく事は、非常に有用で、且つ、面白い分野ではないかと思いますので、是非私より下の世代の方にもチャレンジして欲しいと願っています。

 
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