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2010. 4. 5.Up Dated.
REITの話題性

 2010年に入って、株式の方は回復基調の兆しが見えますが、一方、REITは依然として低迷を続けている為に、話題性が低下しているようです。
その為か、雑誌等で取り上げられる機会も減っていますので、一般的な関心は減少していると考えられます。
然しながら、この状況が必ずしも悪い訳ではありません。
REITを含めた不動産投資が一般化するという状況は、日本の不動産バブルや米国のサブ・プライムローン問題を見れば分かるように、負の局面が大き過ぎる傾向があります。
又、必要以上に取引が活発化すると合理的根拠のない価格上昇を招きますから、不動産投資が大衆化するというのは避けておく方が賢明です。
その意味では、ややマニアックな投資商品という位置付けが妥当だとも言えます。
製造業等を見ると、国内のマニアックなユーザーによって品質が向上したり、スペックが進化したりするという例が散見されますから、歴史の浅いREITも暫くはマニアックな投資家によって育てられる必要も感じます。
但し、ここで言うマニアックな投資家とは個人投資家を指していて、機関投資家ではありません。
家電製品等を見れば分かるように、家庭用と業務用では改良のスピードも違いますし、要求されるレベルも家庭用の方が高くなりますが、これは投資商品でも同じ事が言えると考えられます。
個人投資家は自らの費用とリスクで投資を行いますから、機関投資家とは真剣度が違いますし、銘柄側にとっても予めコンセンサスが取れない相手でもありますから、常にアンテナを張っていなければならい対象です。
従って「捉えきれない」対象ではありますが、米国のように何時でも集団訴訟を起こすというモンスターではなく、比較的シャイな特質も持っていますから、これに対応しないのは怠慢だとも言えます。

一方、不動産証券業界の最近の動きでは、個人投資家ではなく、年金等の機関投資家に向けた私募ファンドの組成が活発化しています。
インカムリターンを前提にした私募ファンドを目指しているようで、恐らく年5.5%以上のリターンが確保されるのではないかと考えられますが、この条件なら、個人投資家にも受け入れられるはずです。
敢えて年金等の機関投資家向けとするのは、少数投資家に絞って運用効率を上げたいのと、組成側が比較的楽に利益を確保出来る相手だと踏んでいる事もあります。
既に不動産業界では、個人以外を対象として楽に利益を上げられるビジネスモデルは存在しませんから、これが最後の方法かも知れません。
但し、年金というのは、元は個人の資産ですから、これを間接的に引っ張って上手い事しようとする動機では困ります。
勿論、 「そんなことは考えていません」 「長期にわたって真面目に運用します」 という説明でしょうが、これを担保する方策は現状ではありません。
又、不動産投資の運用戦略というのは確立された方法論もありませんし、既に10年を経たREITでも答えは見つかっていませんので、私募ファンドが上手く遂行できるというのは幻想でしかありません。尤も下世話に言えば、幻想こそ投資の動機だとも言えますから、案外上手く事が運ぶのかもしれません。
 
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