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2009.12. 4.Up Dated.
2件の増資について


先日、ジャパンリアルエステイト投資法人(JRE)と野村不動産レジデンシャル投資法人(NRF)の公募増資価格が発表されました。 その内容は以下の通りです。

従前の発行済
投資口数
従前の投資口簿価
(出資総額/発行済投資口数)
新規発行口数(オーバー
アロットメント含む)
払込価格 前回増資価格
JRE 443,000口 671,787円 46,200口 579,040円 997,500円
NRF 96,765口 555,675円 28,770口 279,097円 436,567円

「ジャパンリアルエステイト投資法人の増資」
@ 払込価格/投資口簿価は、86.2%
A 前回増資価格/今回増資価格は、58.0%

「野村不動産レジデンシャル投資法人の増資」
@ 払込価格/投資口簿価は、50.2%
A 前回増資価格/今回増資価格は、63.9%

@は増資による投資口の希薄化に関係しますので、本来は従前の投資口簿価と同等又はそれ以上での増資価格が求められます。
Aはエクイティに対する配慮で、過去の増資価格を大幅に下回ることは避けたいのが実情です。
この視点から見ると、この2件の増資は不調とも言える内容になってしまいました。
特に、老舗銘柄であるジャパンリアルエステイト投資法人の増資は過去の増資価格に比べて半分近く下がってしまった上に、投資口簿価に対しても14%低い価格になりました。
これは、銘柄側の見込み違いなのか、それとも想定の範囲内なのかを聞きたい所です。
勿論、厳しいエクイティ市場の中での増資ですから、ある程度の覚悟はあったでしょうが、投資家の失望を誘うような増資を敢行する理由があったのでしょうか。
今回の増資は、物件取得の為に行われていて、スポンサー企業が保有しているオフィスビルの持分を追加取得しています。
相手がスポンサー企業ですから、敢えて厳しいエクイティ環境で増資するのではなく、回復が予想される来年4月以降まで待つという選択肢もあったと思います。
投資家の為の仕組みであるREITで、投資家の利益を損ないそうなイベントを敢行するのは、存続を掛けざるを得ない銘柄ならまだしも、上位銘柄のジャパンリアルエステイト投資法人が行う理由が理解出来ません。
増資価格が低かったので、投資家は将来のキャピタルゲインを得られる等というREITとしては不合理な理屈で糊塗するつもりはないでしょうが、何れしても、REITに対する見識を疑われても仕方ありません。
一方、野村不動産レジデンシャル投資法人も物件取得の為の増資ですが、こちらは最初から厳しい増資を覚悟していたと思われます。
こういう状況でも増資を行わなくてはならないような状態にあったのだと思われますし、希薄化や投資口簿価の切り下げも想定範囲内だったと思います。
このようなイベントをジャパンリアルエステイト投資法人では問題視しても、投資法人としては格下である新興銘柄の野村不動産レジデンシャル投資法人では看過せざるを得ないという見方も出来ます。

今秋は増資の成否がキーポイントだと考えていましたが、今の所成功したのは日本アコモデーションファンド投資法人だけです。
然しながら、私から見れば、ジャパンリアルエステイト投資法人と野村不動産レジデンシャル投資法人は、元々エラーの目立つ投資法人ですから仕方ないという感じもしますし、見方によっては悪い材料は年内に出尽くした方が2010年の展望が開けるかもしれませんから、そう考えることにしたいとも思います。
 
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