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2009. 8.28.Up Dated.
REITの投資法人債について

 REITへの資金繰り支援のための官民ファンドが9月5日に設立されるようです。
支援の内容は、償還を迎える投資法人債(社債)の借換がメインになるようですが、本来は、債券市場で再調達したい所です。
REITは収入が安定していますから、なるべく長期資金の借り入れを多くして、支出の変動化を少なくしたいと考えています。そのため、銀行借入より調達コストが高くなっても投資法人債にシフトするというのが、財務の考え方になります。
一方、投資法人債の引受側では、REITの信用度や償還能力が明確ではないとして、引受を渋っているために、官民ファンドで肩代わりするようになりました。
世間から見れば、債券市場が渋っているのを公的ファンドが肩代わりするのはしっくりこないと思いますが、これはREITの実態が市場に正確に伝わっていないためでもあります。

REITは誕生して8年になりますが、REITの事業スキームや収益構造が既存業種と異なるために、一般には理解され難い点が挙げられます。
投資市場では、REITを不動産業のサブ・カテゴリーとして見ているようですが、これはREITが不動産賃貸事業を営んでいるというのがその根拠になっているようです。
然しながら、REITの財務分析を行えば分かるように、財務構造は不動産業とは似て非なるものですし、更に言えば、どの既存業種にも当てはまらない新たな業種というのが実態だと言えます。
REITの財務の主な特徴を挙げると、
 @ 総資本回転期間が超長期になる。
 A 事業利益率が抜群に高い。
という点になります。
@の総資本回転期間は平均で13年ぐらいになりますが、このような業種はありません。
そして、この数値を見れば分かるように、借入金の元本返済は前提になっておらず、借換によって資金を賄うようになっています。
そして、これをヘッジするために、抜群に高い利益率を持っている事業体なのです。
REITの直近平均経常利益率(課税されないので、純利益率と同じ)は33.4%になっていて、これはどの業種より高いのです。
因みに、ヤフーの直近純利益率が28.1%ですから、一般事業会社では比較になりません。
また、不動産大手6社を見ると、直近決算では1.8〜6.6%程度しかありませんから、今日のように景気後退している局面では、その差は大きくなります。
このような財務構造からみれば、REITの支払能力はどの業種より大きく、且つ、安定していますから、債券市場にとっては有力な投資先になり得るのです。
勿論、全REITが良いとは言えませんが、半数ぐらいの銘柄のヒストリカルデータは安定を示していますから、投資法人によっては投資法人債の発行が可能なはずなのです。
然しながら、現実はどの投資法人であっても、今は投資法人債の発行は無理です。
これが、官民ファンド設立の背景になっているとも言えます。

以前から言及していますが、REITを客観的・論理的に見るという環境になっていませんから、こういう状態が続いています。
但し、これも市場の責任とだけは言えません。REIT側の説明不足、又は、説明能力の不足が挙げられます。自らの実態を十分に把握しておらず、投資家に対する適切な説明が出来ないことにも起因しています。
従って、緊急避難的に官民ファンドが肩代わりするのは仕方ないとは思いますが、併せて、REIT情報のインフラを整備して、早期に市場に委ねられるような方策も必要ではないかと思います。

 
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