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2009. 7.24.Up Dated.
6月のJ-REIT市況と今後の見通し

 今回は、会員サイトに毎月掲載している市況レポート(09年6月分)を転載します。

◇東証REIT指数とTOPIX1000の推移
年月 東証REIT指数
月間平均値
東証REIT指数
月間変動率
TOPIX1000
月間変動率
2008年1月 1,631.92 85.61 41.94
2008年2月 1,585.25 21.4 20.92
2008年3月 1,422.69 39.14 25.23
2008年4月 1,518.16 28.96 27.1
2008年5月 1,529.03 26.17 16.36
2008年6月 1,431.50 37.3 28.82
2008年7月 1,357.81 24.53 15.1
2008年8月 1,280.60 37.13 14.85
2008年9月 1,197.68 27.56 31.61
2008年10月 857.71 84.99 68.19
2008年11月 809 39.47 36.74
2008年12月 865.34 53.57 17.17
2009年1月 870.74 33.9 26.12
2009年2月 815.03 50.55 15.53
2009年3月 796.39 37.63 33.14
2009年4月 849.57 15.09 8.66
2009年5月 859.65 13.91 9.42
2009年6月 915.45 20.17 9.5
※月間変動率は、月間平均値に対する各日の数値との絶対偏差の平均値

◇6月のJ-REIT市況
6月の投資口価格を東証REIT指数でみると、3月を底として4月から連続3ヶ月続伸していて、前月比でも6.5%と比較的大きな上昇幅を示しました。
又、7月2日・3日は瞬間的ですが、東証REIT指数が1,000ポイントを超えています。
このような動きを見て、
・REITが回復軌道に入った
・不動産の先行指標として見れば、不動産にも回復の可能性が
という楽観的な見通しも出て来ていますが、それは早計です。
REITに限ってみれば、行き過ぎた下落が調整されているだけであり、半数以上の銘柄にとってエクイティ調達が可能な状況には程遠いと言えます。
また、不動産市場では2010年に私募ファンドのローンの大量償還が控えていて、これを乗り越えなければ回復は見えてこないとも言えます。
従って、現在の状況は一応底は脱したが、回復を云々する程の力強さはないと言えます。

◇今後の見通し
政府主導の官民ファンドが9月設立で動いていて、これに対する期待も大きいですが、REITを含めた投資市場の先行きをこのような戦術論だけで語るのは限度があります。
投資市場の回復には、何よりも投資家の復活と投資商品としての魅力の向上が必要です。
カンフル剤のような官民ファンドも一時的には必要ですが、それだけに終わることなく、日本の投資市場の戦略論が求められます。
戦略論とは、投資市場の投資家構成を明確に描いて、目標とする構成に向けて長期的に活動することです。
私の持論は、投資市場の主たる投資家構成を国内個人投資家と海外投資家に絞り、この投資家層に向けて情報発信と必要な施策を展開する事です。
この考えを何度もREIT各社や東証に伝えてはいますが、反応は鈍く、特に東証に至っては、海外投資家対策は及び腰、そして個人投資家対策は付け焼刃的にしか考えていない節があります。
多額な上場費用を取りながら、戦略的な展開を怠り、市場が凋落を始めると税金による救済策だけが頼りという状況は、情けないの一言です。
このように、今の日本のカルチャーだとも言える「ぬるま湯」体質については、何度も言及していますが、日本経済の鍵を握っている投資市場の将来について、真剣に戦略論を論じる人材を東証は集めるべきだと考えます。

一方、REITは新しいジャンルの投資商品として、旧弊に囚われずに、戦略的な展開を積極的に始めるべきです。その施策としては、
@ 海外投資家への恒久的訴求方法の確立
A 個人投資家を主たるターゲットした情報発信の整備
が挙げられます。
@については、何よりも英語版の発信情報が必要となるので、単に個別銘柄毎の英語版HPで終わることなく、REIT関連情報を含めた定期的な情報発信を考えるべきです。具体的には、私の有料HPで発信する情報を提供する事も考えています。
Aについては、6年前から私が展開している個人投資家セミナーの拡充も一つの方法です。
このセミナーでは、予め参加予定者から意見や聞きたい内容を聴取していて、対話型の体裁も持っています。 現在は年に3回程度の開催が限度ですが、これを倍の6回ぐらいに拡充して定期開催とするのも有効です。

以上のように、REITの今後は市場の動向だけに左右されるのではなく、本来は、REIT関係者が特段の動きをすることで切り開かなければならない状況だと言えます。

 
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