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2009. 7.17.Up Dated.
ニューシティ・レジデンス投資法人の再生計画について

 ニューシティ・レジデンス投資法人(NCR)の再建計画案が7月15日に開催された債権者集会で否決されました。 これに先立って5月に開催された投資主総会でも個人投資家から再建案に異議が出されたよう(これは投資口数割合によって否決されたとの事)ですから、エクイティ・デット双方から異議が出て、結局デットの方で否決された形になります。

今回の債権者集会では大口融資先の金融機関が反対したようで、債権額換算では約67%が反対に回ったようです。
反対した金融機関は、大和ハウス工業にスポンサーが交代したビ・ライフ投資法人との合併を念頭に入れた再建案を望んでいるようですが、杓子定規に解釈すれば、この手法は再建計画案の変更ではなく、白紙に戻すことになります。
従ってNCR側はローンスター・グループの支援による現再建計画案の一部修正で突破する考えのようですが、これにはNCR側の関係者の面子も関わっていると思います。
現再建案は入札方式で決定されましたが、ローンスター・グループ以外の応札内容は公表されておらず、ローンスター・グループを選択した合理性が不明でした。
その上、発表されたローンスター・グループの再建計画は、エクイティはゼロにしない、デットは100%償還という事で、下世話に言えば「投資家も債権者もこれで恩の字でしょう」と言わんばかりの内容だと感じました。
然しながら、REITの投資法人は一般事業会社とは元々似て非なるものですから、このような考え方は一般事業会社の再建計画では通用するかも知れませんが、REITでは必ずしも支持は得られません。
NCR側がこの辺を読み間違えた事が、今回の遠因だと考えますが、恐らくNCR側は非を認める事なく、飽くまでもローンスター・グループによる支援で走ると思います。
本来REITの再建計画は、先ずエクイティ投資家を重視し、次に、デットの債権者という順になり、一般事業会社のように従業員(投資法人には存在しない)や経営者の事情等は考慮の対象外です。
更に、資産運用会社は単なる委託先ですし、破綻した際には、運用責任を追及される立場でしかありません。 この順序が、NCRの再建に際しては逆になっている感があります。
NCRの再建計画が誰を中心にして立案されたかは定かではありませんが、恐らく中心になった所が、REITを十分に理解していなかったのだと思います。

次に、問題は今後の行方ですが、これは微妙です。
NCR側の人間の立場や個人的なメリット・デメリットが絡みますから、すんなりとは大口債権者の要求は飲みそうもありません。
場合によっては、手続き論を盾にして、同意しなければ破産手続きに移行するという事で、債権者に圧力を掛ける事もあり得ます。こうなると、泥仕合ですから混沌とします。
本来は、誰の為に再建するのかを冷静に考えて、粛々と進められれば良いのですが、今さら後に引けないというのがNCR側の本音でしょう。
従って、本件の決着がどうなるかは分かりませんが、少なくとも今回の件はREITにとっては良かったと思います。
再建計画案が必ずしもエクイティとデットの為だけでないと見られたら、否決もあり得るという事例が残ります。 それだけでも今回の債権者集会での否決は価値あるものだと考えています。
 
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