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2009. 7. 3.Up Dated.
東証REIT指数と不動産市況

 7月2日に東証REIT指数が終値ベースで1,000ポイントを超えました。 これは昨年10月6日に1,000ポイントを下回ってから約9ヶ月ぶりの回復です。
但し、この1,000ポイントとは東証REIT指数の基準日(2003/3/31)の指数ですから、1,000ポイントを超えたからと言っても、これでREITが上昇基調に入ったと単純には考えられません。
それでも、何時までも1,000ポイント以下に低迷しているのも困りますから、取り敢えずは朗報である事には間違いありません。
この回復については、色々な見方が成り立ちますが、REITを取り巻く不動産市況や金融情勢といったファンダメンタルな要素が好転したとは言い切れません。
特に、低迷を続けている不動産市況については、REITの回復を先行指標として位置付けたい向きもあるようですが、残念ながら不動産市況には未だ大波が予想されます。
それは、不動産私募ファンド向けのノンリコース・ローンの返済が2010年にピークを迎えることです。

私募ファンドがローンを返済する為には保有不動産の売却が必要ですが、その資産総額は13兆円を超えているようですから、この一部でも不動産市場に売り出されれば、買い手不在の今の状況では不動産価格の下落に拍車を掛けます。
こうなるとかなり深刻な事態を招く恐れもありますから、政策当局も含めて予防措置やソフトランディングの対策を準備する必要があります。
金融当局はノンリコース・ローンの貸出機関にジャンプ等を要請するかも知れませんが、これだけでは何の解決にもなりません。
本筋は不動産マーケットのメカニズムを回復させて、私募ファンドの保有物件の流動性を実現する事です。
具体的にどうするかは、恐らくこの9月に設立が予定されている官民ファンドの有識者会議等で議論されたのではないかと思いますが、どういう人達が参加しているのかは分かりませんので何とも言えません。
こういう危機的状況は過去にも何度かありましたが、その時の処方箋は何時も「ケ・セラ・セラ」だったと思いますので、今回も同じ轍を踏む可能性があります。

不動産のメカニズムを明確に説明出来る理論はありませんし、市場参加者の意識や行動様式を理解しなくては有効な手段は立てられませんが、これは口で言う程簡単な事ではなく、相当難解な問題です。
又、不動産の現場を長年に亙って踏んできた人材は、不動産業界でも既にリタイヤ、又は淘汰されていますので、実態に即した対策が立てにくくなっています。
従って下手をすると、本で読んだ知識と、不完全な理論だけで対策を立ててしまい、見込みが狂ってしまう懸念もあります。
そうならない事を願うばかりですが、いくつかの可能性を無視し、リスクに鈍感になることで事態をやり過ごすのが農耕文化から引き継いだ今の日本のビヘイビアでもありますから 丁半博打と思うしかないのかも知れません。

 
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