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2009. 4.24.Up Dated.
不動産融資について

 米国では、今の状況を百年に一度と大仰に表現していて、日本のマスコミもその請け売りで同じ論調になっています。
然しながら、客観的に見ると、米国の不振は不動産に対する甘い認識と金融機関や投資機関のアバウトな感覚から生じたものだとも言えます。
RMBSやCMBSが日本に紹介された時も、この商品に不動産リスクが内包されているのは直ぐに理解出来ましたが、このリスクを多くの投資家に分散する事でリスクが少なくなるような錯覚を起こす仕組みでした。

一方、日本でCMBSの元になるノン・リコースローンが注目されたのは、これらを束ねてCMBSに転換するという仕組みよりは、債権・債務関係がシンプルになっている点でした。
同じような債権確保の方法は、日本にも以前からあって、債務者の保有する不動産に第一順位の抵当権を設定し、且つ、代物弁済予約の仮登記も付け、更に、所有権移転の委任状と印鑑証明書・住民票までも定期的に徴収する方法です。
この方法では、債務不履行になれば、直ちに不動産の所有権移転登記を行って、その不動産の処分代金で債権を回収します。(以前はこれだけの措置を講じても対抗手段があったので、必ずしもスムーズに不動産を確保出来ませんでした)
但し、この方法は余りにも債務者に不利という事で、当局から自粛要請もあって下火になりましたが、米国から紹介されたノン・リコースローンは簡単に不動産を確保出来る点がメリットでした。
日本の金融機関はリコースローンの債権確保の煩雑さを不動産バブル後に嫌という程味わいましたから、企業向け不動産融資形態として特に注目しました。
そして、この融資の要は対象となる不動産の質と掛目である事を理解しましたが、不動産の質の判断は金融機関では難しいので、掛目重視になりました。
日本の不動産に対する融資(主として住宅ローン)掛目(取引金額に対するローンの率)には歴史があって、最も低い時は40%程度で、その後50%になり、更に60%まで上昇し、暫くはこの率で推移しました。
この率が何によって設定されたのかは、それまでの不動産価格の動きが元になっています。
不動産価格が極端に下落すると元値の30%台の価値しかなくなることを経験的に理解していましたので、掛目40%というのは実質的にリスクゼロに近かったのです。
債権者のリスクがゼロというのは双務契約上問題がありますから、この率に債権者リスクを上乗せして50〜60%の掛目になっていました。

このように考えると、不動産の過剰流動性が高まって価格が上昇一方になれば、掛目60%でもかなりのリスクが生じますから、基本的には不動産価格が安定している状態が前提です。(米国では掛目が80〜90%ぐらいまで上昇してしまいました)
恐らく、米国でも同様の感覚は持ち合わせていたと思いますが、何時しかその感覚が薄れ、暴走した結果が今日の状況です。
サブ・プライムローン等で米国の不動産融資状況を見ると、日本の不動産バブル時と酷似していますが、米国はそれを認めたくありませんから、色々な理屈を付けますし、元々日本のようにシャイな文化はありませんから、表現が日本とは異なります。
経済学者の方たちも色々な事を言っていますが、要は「バカなことをした」というのが実態です。
洋の東西を問わず、不動産ではバカなことをするのが通例のようですが、これらを教訓として、そろそろ「バカな事だけはしない」という方向に転換すべきではないかと思います。
 
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