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2008.11.14.Up Dated.
政府の景気対策

 政府の景気対策の一つである定額給付金について、実施手続きの問題から批判的な論調が多くなっています。
確かに、現金給付のような減税は実務的には難しいので、行政側としては不満が出ます。
恐らくマスコミにも行政の不満が伝わっていて、それにより上げ足取りのような批判が出ていますが、「木を見て森を見ない」の類に感じます。

従来、景気対策として減税を行うには、給与所得者には年末調整での負担減と自己申告者には3月の納税期での軽減が主でした。
これでは行政側の事務負担は小さいですから、政府が減税さえ決めれば、後は通達を出すだけで事足ります。
一方、今回の定額給付金は、行政が全て処理しなくてはなりませんから、余計な負担が生ずる事で役所は不満が高まります。
まさか「役人が余計な事務をしない為に定額給付などは止めるべき」という理由でマスコミが批判しているとは思いませんが、国民に戻し税の形で現金給付される事を、手続きの問題から批判するのは視点が矮小過ぎます。
景気対策として実施する以上、より見える形での減税が望ましいのは当然で、年末調整等では企業の賞与減額に紛れてしまいます。
今回のように政治が決断して事を行うのは、民主主義では当たり前の事ですが、官僚主義に慣れた日本では違和感があるようです。
また、現下の世界不況の中で、GDP第2位の日本が景気刺激対策を打たない事は許されませんが、低金利状態では金利政策はあまり有効ではありませんから、どうしてもGDPを少しでも押し上げる形が必要となりますし、即効性も求められます。
このように考えると、今回の定額給付は、まさに政治決断だと言えます。

一方、日本が外貨準備を利用したアジア新興国支援策をいち早く打ち出した事も評価出来ます。IMFの眼は欧州に向きがちですし、実際に欧州の国の支援が先行していますので、アジアの国々に対して日本が行動を起こすのは理に叶っています。
私は、日本にしては珍しく良い発想だと感心していますが、マスコミはあまり評価をしていません。

先を見ると、日本経済の失速度が高まれば、公的資金を使ったテコ入れも必要となりますが、バブル崩壊の時のように、公的資金の投入が先で、国民への還元が後になるという状態を避けるためにも、いち早く減税を実施することは必要です。
勿論、マクロで見れば財源論から異論はあるでしょうが、現下の状態を考えれば、日本の傷を浅くしておかなければ、世界不況への対策も打てませんから、今は財源論から論じる状態ではありません。
以上のように私から見ると大変分かり易い景気対策なのですが、何故か不評のようです。
これは麻生首相の率直な物言いが響いているのかも知れませんが、それよりは日本全体がこういう政治のやり方に慣れていないのではないかと思います。
 
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