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2008. 9.19.Up Dated.
リーマン・ブラザーズ破綻の影響


 先週末、米国証券会社4位のリーマン・ブラザーズが破綻したことで、市場が大きく反応し、日本の株式やJ-REITの投資口価格も下がりました。
J-REITの下げは9月5日に比べるとやや小さく、東証REIT指数では1,177.84(9月5日は1,114.04)になりました。
然しながら、米国の信用不安は未だ解決はされていませんので、終わりに近づいているのか、それとも始まりなのかは即断出来ません。

但し、J-REITはその仕組みから見ればこのようなショックに対してはやや遠い存在です。
J-REITは賃料収入を原資とした配当商品ですので、米国市場の動揺は外資系テナントの賃料交渉には影響が出ますが、国内テナントの賃料には直接影響しません。
また、元々J-REITは賃料水準についても保守的に捉えていて、無理な賃料改定を行っていない銘柄が多いので、J-REIT保有のオフィスビルの平均賃料が今後大きく下がるという予測は成り立ちません。
それでも市場の動揺の影響を受けるのは投資商品の宿命ですので、この時期は各銘柄は粛々として地道な資産運用を続けるしかありません。

一方、これを機会にJ-REITはオフィスビル賃料を長期の視点で捉えるという考え方を持って欲しいと思います。
10年以上前ですが、損益分岐点分析から企業の固定費に該当する賃料負担能力を推測したところ、30千円/月坪〜35千円/月坪程度が1物件の平均賃料の上限という数値が出ました。
オフィスビル賃貸市場は景気の波によって長期で見れば変動しますので、ピークとボトムを考慮して変動の少ない平均賃料水準を設定するなら、前述の数値になるという意味です。
この数字は東京丸の内の丸ビルを建替える際の、収支上の設定賃料として個人的に提案したもので、この前提に立って建築資金の資金調達法を工夫すべきだと提言した事があります。
勿論、オフィス市場が好調の時はこの倍の賃料も可能ですが、それはピークですので長期保有ではその水準は前提に使えません。
逆に、保守的に捉えておけば、賃料収入が何時も読めるという安定性が期待出来ます。
往々にして、証券界や株式投資ではピークで目一杯稼ぐという感覚になりがちですが、J-REITではこのような考え方は使えません。
このように拠って立つ所がJ-REITは私募ファンドや株式投資とは異なるのですが、その違いをJ-REIT自らも自覚していない面もありますから、尚更市場には伝わりません。
J-REITは今のような時期に、この辺りをもう少し考えるべきなのではないかと思っています。
 
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