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2007.11.16.Up Dated.
釈然としない取引

  11月14日に、ジャパンリアルエステイト投資法人(以下、JRE)から「晴海センタービル」を新たに取得するとの発表がありました。
この物件は晴海アイランドトリトンスクエアの並びに建つオフィスビルで、平成18年11月に竣工した物件です。
JREから発表されたデータを見ると、取得価格は鑑定評価を5億円上回る268億円となっています。 取得先は、晴海フロントTMKですが、JREは予め、このTMKの優先出資証券を平成17年3月・同年11月・平成18年11月の3回に亙って、優先出資証券の総口数の49.9%を優先買取権付きで12.7億円で取得していました。

今回の取得はこの優先買取権を行使しての事ですが、釈然としないのは、取得価格と取得利回りです。
JREの発表によると、予想NOI利回りは4.37%/年となっていますが、トップリート投資法人が区分所有で保有している晴海アイランドトリトンスクエアの直近NOI利回りは5.06%/年(期末価格比)となっていて、その差は約0.7%あります。
このように見ると、今回のJREの取得は決して有利な取引だとは言えず、単に競争入札でなく買えたというだけです。
尤も、このTMKに絡んでいる不動産業者(三菱地所はこのTMKの優先出資証券を保有している)は「4%台の利回りはお買い得です。今なら相場は3%台ですよ」と不動産屋の常套文句を並べているだろうと思います。
JREの平成17年3月22日のニュースリリースを読むと、「将来の資産取得に向けた先進的な取り組み」だと謳っていますが、入札でなくて買えた事が先進的な取り組みだったのかという思いを抱きます。

このように書くと、出資金の配当金が78億円もあるのではないかという反論がありそうですが、確かにこの配当金によって次期予想配当金は29,730円まで増額されましたが、一時の配当金増額で良しとするのかという疑問があります。
JREITの投資家は長期に亙るパフォーマンスを見て投資するのですから、瞬間的な配当金の上積みで納得するという考え方は成り立ちません。 むしろ、配当金の上積みを増やすよりも、より高い利回りで取得する方が投資家利益に沿うという事が言えます。
その意味では、JREが平成17年3月から12.7億円もの資金を注ぎ込んで取得した物件がこの程度の利回りでしかないという事が引っ掛かります。
これだけの手法を駆使しても、JREIT投資家にとって有利な取得が出来ないとなれば、他に手立てはなさそうです。
又、視点を変えて見れば、JREITは既に不動産の買い手としては最大の規模を持つようになっているのですから、不動産業者の手前勝手な常套文句等に引き摺られるのでなく、如何に投資家利益に叶うかという視点で、取得価格のハードネゴをして欲しいと思います。
そして、オリジネーターであり、且つ、売主でもある三菱地所は、後々もこの物件に関係を保つのですから、ひたすら売却益の最大化を追うのではなく、JREの投資家の為に働いても良かったのではないかと思います。
 
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