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2007.11. 2.Up Dated.
最近の不動産開発手法

 ここのところ、大手デベロッパーがSPCを使って不動産開発するスキームが多くなっています。
以前であれば、土地取得・建物建築資金を金融機関から借り入れて(リコースローン)開発事業を展開しましたので、事業リスクと資金リスクの両方をデベロッパーが負担していました。
一方、SPCを使えば、借入れはノンリコースローンになりますし、エクイティにも他の出資者を入れれば、資金負担はかなり軽減されますから、開発手法としては便利な面があります。
金融機関も、大手デベロッパーであれば事業展開能力も高いであろうとの前提で、気前よくノンリコースローンを付けますし、融資掛け目も比較的高くしているようです。

デベロッパーにとって、SPCを使った不動産開発手法は資金リスクの分散が図れる事が最大のメリットになりますが、反面、事業リスクはどうなるのかという点が疎かになっているような気がします。
確かに、不動産開発事業で共同事業方式を採れば、資金負担リスクは軽減されますが、一方の事業リスクは増えると考えるのが常道です。
多くの事業者が参画することで、何となく事業リスクも小さくなるという感覚的な見方を持つ場合がありますが、共同事業の実態を見れば、それは期待外れに終わる場合があります。
事業着手から分譲までの間、市場が順調に推移していれば、首尾よく不動産売却益を獲得出来ますが、本来上手くいく事業であれば、デベロッパーは独り占めした方が得策なのです。
それを敢えて分散するのは、事業が順調に進まない時の資金リスクのヘッジを考えての事ですが、ここが問題なのです。
事業が予定通り展開しない場合、共同事業方式は「船頭多くして、船、山に登る」という事態に陥りかねません。
過去にはこのような展開になってしまった共同事業もかなりありましたから、本来、共同事業方式はこのリスクをわきまえている者同士でなくては上手くいきません。
まして、ここ1・2年の不動産市場の好調な状態を前提にした組み立てでは、一度市場が軟調になった時は直ぐに歯車が回らなくなります。
勿論、これらは不動産事業に付きものリスクですから、それぞれの当事者が覚悟さえしていれば問題はありません。
然しながら、今日全盛となっているSPCを使った共同事業に参画した事業会社や金融機関がこのリスクを承知しているとは限りません。
投資利益が得られそうだという期待感だけで参画しているところもありそうですが、不動産開発事業による利益獲得は、投資行為と言うよりは投機に近いという前提で考えるべきではないかと思います。
 
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