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2007. 7.27.Up Dated.
情報の価値

 今年はJREITに関する取材が途切れず、毎月数社のマスコミから取材申し込みを受けています。 但し、JREITに関する取材先は私を含めて数人のアナリストが常連のようで、大抵は同じ顔触れになっています。
そんな中で、某雑誌の編集者の方と雑談した時に、読者はどういう情報を欲しがっているのかを聞いたところ、「ズバリ儲かる情報です」との答えだったので、雑誌はいくらで売っているのか尋ねたたら、「600円です」という話でした。
そこで私は、「600円を払って儲かる話であれば、せいぜい数千円の利益が上限ですか」と聞くと、 「そんな程度ではとても満足してくれません」との返答だったので、 「600円で数万円から数十万円儲かる話というのは詐欺のような危ない情報ではないですか」と言うと、編集者は苦笑していました。
実は、このような話は投資関係の雑誌では何処も同じ事情のようで、ライターの方からも何度か愚痴を聞いています。
確かに今は投資ブームですし、金融庁を筆頭とした行政も投資家保護に重点を置いていますが、投資判断に掛ける労力とコストに比例して投資リスクが軽減されるような状態にならなければ、健全とは言えません。
投資対象の知識も身に付けず、情報収集の労力とコストを惜しむような投資家を保護するのは、税金の使途としては疑問があります。
税金は投資と無縁な人や投資を全く行っていない人からも徴収していますから、それを投資家保護の名目で投入するのは合理性を欠きます。
そうは言っても、日本の現状が変わる気配はありませんが、一方、海外からの問い合わせに対応してみると、彼我の違いに愕然とします。
私は個々の投資家に対する投資アドバイスはしませんので、JREITや日本の不動産の実情、マーケットプライスの捉え方等の話しかしませんが、それでも海外の投資家は、日本では考えられないコストを負担します。
どうしてこれ程の差があるのかを考えると、色々な理由が思い浮かびますが、その一つに、投資行為の捉え方の違いがあるようにも思えます。
海外投資家は、投資を純粋ビジネス行為として見ており、所謂「あぶく銭」のような考 え方をしていないからだと思います。
ビジネスとして考えれば、必要なコストは経費であり、粗利益から経費を差し引いたも のが純利益という図式になりますので、コストを惜しめば利益がマイナスになる投資行為では、コストは額でなく質を重視するという事になります。
もっと砕けて言えば、質の良い情報であればコストは惜しまないという風土が定着して いるようにも見えます。又、海外投資家の質問も的確で、ずばり目的追求型なので、私としても非常に面白く感じています。
例えば、不動産鑑定評価とマーケットプライスはどの程度の乖離があるのか、そしてその理由は何かという質問もありますし、賃料の形成根拠は何かという問いもあります。
私はこういう質問を受けるとワクワクする性質なので、返答にも熱が入ります。
これが仮に「どの銘柄を買えば儲かりますか」という質問であれば興醒めして話は終わってしまいますが、このような質問は未だに受けたことはありません。
日本の投資家全てとは言いませんが、「600円払って大儲けする話」を求める人と、「投資判断の前提となる専門知識の入手に必要なコストを惜しまない」という投資家と、どちらがまともなのかを考えると、何か寂しい気持ちになります。
 
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