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2007. 3. 9.Up Dated.
投資口の分割


JREITの株高を受けて、投資口分割の噂も出始めているようです。
上場41銘柄を見ると、既に上場前に投資口分割をしている銘柄もいくつかあって、その代表格は20万/口とした日本プライムリアルティ投資法人があります。
日本プライムリアルティ投資法人は、当初、個人投資家を主たるターゲットとして上場する目的で投資口分割を行ったと聞いておりますが、最近の投資口分割の意図は何処にあるのでしょう。
株価が高くなり過ぎて、個人投資家の手が届きにくくなっているためという見方も出来ますが、一方で、新興株式市場で行われたように、株価の揚げしろを稼ごうというのではないかという勘繰りも成り立ちます。
100万円/口を超えてしまうと、確かに個人にとっては買い難くなりますので、投資口を分割することで個人投資家を呼び込むという考え方は分かりますが、仮にこの趣旨であれば、以前より個人投資家への普及活動に熱心であったかも問いたいところです。

個人投資家層の拡大については、銘柄側だけの問題ではなく、証券会社にも責任があります。証券会社は1口の売買よりはまとまった口数の売買の方が手数料を稼ぎ易いですから、どうしても大口投資家に顔が向きます。 大口投資家重視の姿勢のままで、一応の体裁を作るには、手っ取り早く株価分割を実施するという考え方もあります。
一時の株式市場での株価分割はこの傾向が窺えましたので、安易な分割に批判が生じましたが、JREITの投資口分割がこれと同じ考え方でないことを祈りたい気分です。

次に、視点を変えて、そもそもJREITの株価が今の水準で良いのかという問題もあります。株価の価値を何で計るかは簡単ではありませんが、不動産投資の視点で見れば、純資産価値という参考価格に対して約2倍の株価というのはやはり行き過ぎです。
例えば、2,500万円程度であろうというマンションが5,000万円で取引されていれば、誰が見ても異常ですが、有価証券に変換されることで実体が見え難くなってこのような取引も成り立ちます。
JREITは有価証券に変換された不動産投資商品ですので、値上がりには不動産業者とは違っていろいろな理屈が登場します。 スプレッドの縮小や内部成長論もありますし、投資ポートフォリオの構築というマクロ投資の考え方もあります。
これらの理屈も間違いではないと思いますが、実体である不動産投資の面の異常さ打ち消すものではないと言えます。 JREITは、不動産運用のプロが投資家の資金を預かって不動産投資をする仕組みですので、不動産の見方が疎かにされるのは納得出来ません。 この意味でも、投資口分割の前に不動産価値という点を明らかにしていくことが必要です。

不動産価値という言葉が存在しても、その実体は明確ではありませんし、基準となる価値も存在していませんが、JREITも、そろそろこの難しいテーマに取り組む必要があると考えられます。 先ずは、不動産価値という点を明らかにしてから有価証券価値を計るというのが本筋ではないかと考えます。

 
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