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2006. 8.24.Up Dated.
J-REITの投資対象用途と情報開示について


 JREITの投資対象は創設から5年間で少しずつ広がりを見せています。
初めは、オフィスビルだけに投資する投資法人で始まり、次に、商業施設が加わり、そしてホテルと賃貸マンションまで広がり、その後はこれらの用途を組み合わせた投資法人の設立が増えました。 更に詳細に見ると、商業施設はショッピングセンターからマルチテナント型の都心型商業店舗ビルにまで広がり、賃貸マンションのカテゴリーにもウィークリーマンションや法人社宅が入り、ホテルもシティホテルだけでなくビジネスホテルへの投資も増えました。 又、物流倉庫もJREITの投資対象に加わり、収益用不動産の多くがJREITの投資対象になりました。
最近の銘柄では、有料老人ホームやスポーツクラブの施設も組み入れるようになり、投資対象用途が更に広がりを見せていますが、これらの投資対象の広がりが投資家のためなのか、それとも組成側の事情に拠るものなのかという問題があります。

JREITにとって新たな投資対象追加の目的は、@ ファンド全体の収益増 Aセクター分散により収益の安定化 の何れかになって欲しいところですが、実際は物件取得難による窮余の策といった面も窺えなくはありません。
JREITのような投資商品では、投資対象不動産の収益について過去の実績が必要ですが、新たな用途の場合、トラックレコードが無かったり、又は、公開されていなかったりという問題があります。
例えば、初期にシティホテルを持ち込んだユナイテッド・アーバン投資法人では、それまで情報公開されていなかった新宿ワシントンホテルの個別収益を開示して、新しい投資対象の収益の説明を投資家に行いました。 その後の、ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人では、更に詳細な収益データも開示した事で市場から一定の評価を受けているとも言えます。
一方、マルチテナント型商業施設ではテナントマターとなる個別店舗の売上げ等の情報が少ないのが実態ですが、これも阪急リート投資法人が少しずつ開示を始めています。

今後もJREITの投資対象用途は広がると考えられますが、JREITの仕組みを考えれば、投資家に対する情報開示を前提にして欲しいと思います。 詳細なデータが開示出来ない用途を投資対象にする事は投資家のリスクをないがしろにしている事と同義になります。 収益構造とその推移をブラックボックスにして投資を行う事はJREITの仕組みから考えれば出来ないはずですが、最近では、株式投資のような視点で運営しているのではないかと疑う資産運用会社も目に付きます。

現在、株価が低迷している銘柄は、本来、他の銘柄に先行して詳細な収益データを開示して投資家への説明を行う事で信頼を得る必要がありますが、今のところそのような動きがありません。 株価が公募価格を割っている銘柄は、並みの事では回復しませんので、徹底的な情報開示によって投資家を惹きつけようとする市場戦略を持っても良いはずです。 仮に、何処かの銘柄が情報開示を梃子にして市場評価を得ることになれば、JREIT全体に対して好影響を与えますし、市場を更に成長させることにも繋がりますので、株価が低迷している銘柄に、是非チャレンジして欲しいと思います。

 
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