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2006. 4. 6.Up Dated.
不動産証券化商品の行政処分について
 
 金融庁が不動産証券化商品の資産査定と販売に当たったJPモルガン信託銀行とJPモルガン証券に対して行政処分を行うとの報道がありました。
この商品は私募の不動産証券化商品ですが、私募という限られた投資家(機関投資家等)を相手にした商品であっても金融庁は厳しくチェックするという姿勢を見せたものと思われます。
内容的には組成資産に法令違反の物件が含まれていたようですが、従来の不動産取引では、土地価格重視で建物の質は厳しく問わないという姿勢が横行していましたので、不動産証券化商品では許されないという事を示す良い例になるとも言えます。

 一方、今回の例を特殊事例と見るか、それとも氷山の一角と見るかによって今後の影響が異なりますが、明確な法令違反は別にしても投資家側に立った視点で、関係業界が動いているとは必ずしも言えない面もあります。
私募の不動産ファンドに対して、第3者からのチェック機能が働くというというケースはほとんど期待出来ませんので、投資家保護は組成側の良心に委ねるというのが実状なのではないかと思われます。
それでは、公募型のJ-REITはと言うと、これも、再三触れているように、充分なチェック機能が備わっているとは言えません。
法令違反は論外としても、投資家の利益なのか、それとも、スポンサーとなったオリジネーターの利益の為なのかというグレーでデリケートな部分もあります。

 J-REITが2005年に取得した不動産は400件弱に達していますが、この取引全てを詳細にチェックするのは大変な労力を必要としますので、恐らく、証券アナリストの方達も持て余しているのではないかと思われます。
J-REIT専門で活動している私にとっても、これだけ銘柄数が増えて物件取得が活発化すると現地調査の捕捉率が低下していきます。
2005年の前半までの捕捉率は90%ぐらいを維持していましたが、後半になると、既存銘柄の追加取得物件の捕捉率が低下していきました。
それでも、J-REITは私募ファンドに比べれば良質な物件を取得しますので、大抵は、現地調査済みの地区での取得なので、物件所在地と写真だけでも大凡の見当が付けられるのが救いです。

 今後もJ-REITの銘柄数は増加し、物件取得も続きますが、これをどのようにチェックしていくのかはJ-REIT誕生当初からの宿題です。
勿論、行政に全てを頼る訳には行きませんので、市場関係者の意識と努力が求められます。
今回の金融庁の処分を機会に、市場インフラの整備に傾注するという関係者が増えて来るのを期待したいと思います。
 
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