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2006. 2. 2.Up Dated.
J-REITの情報開示
  
 このコラムでも過去に何度かJREITの情報開示を取り上げましたが、銘柄数も増えた事で改めて情報開示について考えてみたいと思います。

 先ず、上場時の目論見書ですが、これはほぼ定型化してきましたが内容的にはあまり進化していないように思えます。
初期の頃に比べると巻頭のカラーページが増量されて見栄えは良くなっていますが、目論見書の記載内容が必ずしも増えているとは言えません。
目論見書の作成費用はかなりの出費になるはずですので、カラーページを増やせばその分印刷費が嵩み、結果として投資家の負担が大きくなりますから、見栄え重視で目論見書を作成するのは一考を要します。
見栄えよりは、投資家層を広げる為にシニア層を更に意識して、使う字体の級数を大きくしたり、行間や字間を広げたりする方が現実的ではないかと思えます。
又、相変わらず保有物件の特記事項に小さな文字が使われていながら、そこに重要な事項が記載されている例が目に付きます。
JREITの目論見書作成には、弁護士等の専門家のチェックと主幹事証券会社のチェックが入るようですが、これらは投資家サイドに立ってのチェックと言うよりは、セルサイドの事情を優先しているように思えますので、今年に上場予定している銘柄には、是非、目論見書の記載内容を投資家サイドに立って見直しをお願いしたい処です。

 次に、上場後の物件取得情報は各銘柄のHPで公表されますが、相変わらず、取得利回りが不明なまま物件取得を発表している例があります。
特に、株価がIPO価格を下回っている銘柄が、追加取得物件の利回り算定が出来ない情報開示を行う事は、株価を上昇させようという意欲が不足しているようにも思えます。
物件の追加取得によって投資家にどういうリターンとメリットがあるのかを説明しなくては、市場評価が上がる事は望めません。
単に物件を追加取得さえすれば株価が上がるというのは、JREITの初期の頃の話ですので、銘柄数が増えて市場評価も多極化してきた今日では、内容を以ってアピールする姿勢が必要です。
又、耐震偽装問題を契機として評価の下がっているレジデンス系銘柄では、特に情報開示に気を配り、可能な限り透明性を確保して投資家の信頼を繋ぎ止める必要がありますが、総じて、物件取得時の情報開示は不十分な銘柄が多くなっています。
本来であれば、レジデンス銘柄が情報開示の最先端を走り、投資家重視の姿勢を強く打ち出す事で保有資産の安定性を訴えて評価を上げていくのが常道ですので、レジデンス系銘柄の情報開示は特に工夫して欲しいと思います。