トップ
2005.10.28.Up Dated.
不動産バブルとJ-REIT
  
今年に入って不動産価格の高騰とJREITの動きを結び付けるようなマスコミの取扱いが増えましたが、「ファンドバブル」という言葉自体は昨年から関係者の間では言われていました。
今年の地価公示で都心の一部地域の地価が上昇している事も、この論調を加速しているのではないかと思いますが、確かに、JREIT全体の不動産取得需要は年間1兆円程度に達していますから、旺盛な買い需要が価格を押し上げているという事は言えます。
但し、JREITの資産取得は長期保有という前提なので、取得後に、再度、不動産市場へ売りに出される事はありません。
元々、不動産バブルは、価値の実体を考えずに業者間の転売を繰り返す事で、価格が上昇していく様を言いますので、JREITのように配当原資となる収益利回りを意識して取得する買い主体の行動とは異なります。
それでも、不動産の買い手としてJREITの存在は大きくなったことで、世間一般から見れば、JREITとバブルを結び付ける事が最も分かり易いという面がありますので、JREITはあらぬ誤解を招かないような慎重な行動も必要です。
JREITを含めた不動産証券化商品の優位性は、収益に課税されないという税制上の特典が寄与していますので、課税されないファンドの不動産取得によって不動産価格が無闇に上昇するというのは決して好ましい事ではありません。
この点を考えると、ファンドが取得対象とする収益用不動産価格の高騰という状況に対してJREITは先手に動く必要があります。
前述したように、不動産バブルは短期間に転売を繰り返す事で起きますから、JREITが取得する不動産の取引履歴を開示するというのも一つの方法です。
JREITの取得は、所有者から直接買う方式と、ブリッジ・ファンドという中間所有者を介して取得する方法が殆どですので、例えば、過去の3年間程度の取引履歴を、資産取得時に併せて開示する方法も有効です。
現在は、前所有者のみを開示していますが、不動産取得時には登記簿を調査しますから、JREIT側では当然の過去の取引履歴は承知していますので、これをそのまま開示するだけで事は足ります。
仮に、過去に頻繁に売買された不動産を高値(低い利回り)で取得すれば、正に、バブルに加担しているということになりますので、恐らく、このような不動産を取得する事は避けることになると考えられます。
勿論、真面目に資産運用を行っている銘柄であれば、このような不動産取得を行なうはずもありませんが、既にJREITも26銘柄に達していますから、その行動も考え方も仕組みから考えて一定の範囲内に収まるという従来の常識が通用しない恐れもあります。
以前のように何かが起きてから規制を行うという泥縄方式ではなく、予防を重点にした自主規制で投資家の信頼を得るというのがJREIに求められる形だと思いますので、この時期に取引履歴の開示を行う事でバブル論をJREITから遠ざけることが必要だと思います。